本研究では、C. elegans初期胚をモデル系として用いて、細胞増殖抑制活性を持つ天然化合物(+)-ネオペルトリドの作用機序解析を行った。(+)-ネオペルトリドはin vitroでシトクロムbc1複合体活性を阻害することが報告されていたが、これが直接細胞増殖抑制を引き起こしているのかは不明であった。染色体・微小管・中心体を蛍光タンパク質で標識したC. elegans受精卵を(+)-ネオペルトリドで暴露し、その表現型をライブイメージングによって解析した結果、細胞分裂が停止し、紡錘体微小管(とくに、動原体微小管)が過度に伸長することを見出した。阻害剤やRNAiによってシトクロムbc1を阻害しても微小管の過剰伸長は見られなかったことから、(+)-ネオペルトリドの標的はシトクロムbc1にも存在することが示唆された。蛍光標識ネオペルトリド類縁体(東北大・不破らより供与)を線虫胚に導入し、その集積場所を顕微鏡観察によって調べた結果、小胞体に集積することが示された。以上より、(+)-ネオペルトリドは線虫胚において、小胞体に局在する分子を標的とし、微小管の安定化を引き起こしていることが示唆された。
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