細胞内の主要なタンパク質分解経路には、ユビキチン-プロテアソーム系とオートファジーが知られている。このうち後者は、隔離膜が周囲の細胞質を取り囲んで生成するオートファゴソームが、つづいてリソソームと融合することによって内容物を分解する。飢餓応答として、よく知られているが、タンパク質凝集体,傷ついた細胞小器官や病原体を分解するため、疾患予防や自然免疫応答の観点からも重要である。特に、最近では、選択的オートファジーと呼ばれる特定の積み荷を分解するプロセスが発見され、その機構の詳細や創薬への応用が研究されている。本研究課題は、選択的オートファジーによって認識される目印が、タンパク質の翻訳後修飾の種類や数によるという仮説を立てて、研究を進めている。これまでに、ある種の翻訳後修飾が「目印」の候補となっている。そこで、本年度は、この翻訳後修飾を、特定の積み荷に人為的に導入して、選択的な分解が起こるか検討した。その結果、予想したように人為的導入ののち積み荷のオートファゴソームへの取り込みが見られた。これは、翻訳後修飾の制御による疾患治療の可能性を示すものである。今回用いた手法を種々の疾患関連タンパク質を使って順次検討し、一般性について知見を得ることが次年度の課題となる。また、オートファジー受容体の関与を含め、積み荷選択の機構についても検討する必要がある。さらに、本翻訳後修飾を模した人工分子によってタンパク質修飾をおこない、オートファジー誘導が見られるかについて検討する。
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