公募研究
本研究で取り扱っているライソシンE(旧名カイコシンE)は、カイコ黄色ブドウ球菌感染モデルでの治療効果を指標に探索された新規抗生物質であり、細胞膜中のメナキノンを標的とする新しい作用機序を有する。ライソシンEは血清中の特定のタンパク質によって、抗菌活性が促進することが明らかになっている。本研究では、そのタンパク質とライソシンEの相互作用について解析した。これまでにライソシンEとメナキノンの混合により沈殿形成されることが明らかになっているが、予め水溶液中に本タンパク質を加えておくと、ライソシンEとメナキノンの混合物中に、本タンパク質が共沈することが明らかになった。従って、これらの3つの化合物は三者複合体を形成すると考えられる。また、本活性化因子によるライソシンEの抗菌活性の亢進は、黄色ブドウ球菌の細胞壁画分を加えることによって抑制された。このことから、黄色ブドウ球菌の細胞壁画分が本活性に関わっていると考えられる。さらに、本タンパク質の活性ドメインを欠失したタンパク質を作製し、ライソシンEの抗菌活性に対する影響を検討した。その結果、欠失型は野生型に比べライソシンEの抗菌活性の促進活性が低下していた。このことから、本活性ドメインは、本タンパク質のライソシンEの活性促進に必要であると考えられる。さらに、ライソシンEの血清中の抗菌活性の促進因子について、同定したタンパク質の寄与率を検証する目的で、本タンパク質をコードする遺伝子破壊マウスから血清を調製し、ライソシンEの抗菌活性の促進活性を定量した。その結果、遺伝子破壊マウスの血清では野生型に比べ12%まで、ライソシンEの抗菌活性の促進活性が低下しており、大部分が本タンパク質によって説明できることを明らかにした。今後は、本遺伝子破壊マウスを用いて同定したタンパク質のライソシンEの治療効果への影響について検討する必要がある。
1: 当初の計画以上に進展している
当初研究計画通りに研究が遂行できており、さらに研究計画では来年度に実施予定であった活性化因子の欠損マウスによる解析を前倒しで実施できたためことから判断した。
研究計画通り、同定したライソシンEの抗菌活性の促進メカニズムを明らかにするための解析を引き続き実施する。現在、ライソシンEの大量調製を試みており、本研究計画で最も難しいライソシンE-メナキノン-活性化因子の構造解析について検討する。
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すべて 雑誌論文 (8件) (うち査読あり 5件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (9件) (うち招待講演 2件) 備考 (3件)
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