研究領域 | 天然物ケミカルバイオロジー:分子標的と活性制御 |
研究課題/領域番号 |
26102715
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研究機関 | 独立行政法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
川上 隆史 独立行政法人産業技術総合研究所, 創薬分子プロファイリング研究センター, 研究員 (60638881)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | PUREシステム / ペプチド / 分子進化 / 抗体 / プロテオミクス / mRNAディスプレイ / Nアルキルアミノ酸 / ペプトイド |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、再構築型無細胞翻訳系(PUREシステム)とmRNAディスプレイ法を用いて、天然物を模したペプチドの大規模ライブラリーからのリガンド探索を行うための基盤技術を確立することである。 今年度は、産総研・創薬分子プロファイリング研究センターの夏目徹研究センター長と五島直樹研究チーム長との共同研究の下、βカテニンを標的とする天然物様人工ペプチドリガンドの探索を行なった。 まず、五島直樹研究チーム長の有するHuman Protein Factoryシステム(N. Goshima et al., Nature Methods 2008)を用いて、ヒトβカテニンcDNAより、部位特異的にビオチン化されたヒトβカテニンタンパク質を調製した。そして、このin vitro発現βカテニンを標的として、天然物様ペプチドライブラリーからの人工リガンドの探索を行い、新規の人工環状ペプトイドリガンドの取得に成功した。すなわち、『環状ペプトイドの分子進化』に成功した。 更に、夏目徹研究センター長の専門とする超高感度質量分析システムを用いたプロテオミクスアプローチにより、βカテニンと相互作用するタンパク質の網羅的プロファイリングを行なった結果、取得した人工環状ペプトイドリガンドが阻害しているβカテニンの相互作用タンパク質を同定することに成功した。 また、取得した人工環状ペプトイドリガンドを用いて、細胞ライセートからのヒトβカテニンのプルダウン(単離)や、ウェスタンブロッティングにおけるβカテニン検出に成功した。すなわち、本研究で開発した人工環状ペプトイドリガンドが免疫沈降やウェスタンブロッティングにおける抗体のようなタンパク質解析ツールとして利用できることを実証した。 これらの研究成果は、現在、責任著者として論文執筆中である(T. Kawakami (責任著者) et al., 論文執筆中)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
①無細胞翻訳系で調製したヒトタンパク質を標的とするリガンド探索に成功し、②ペプトイドの分子進化に成功し、③プロテオミクスアプローチによる阻害標的タンパク質の同定に成功し、④開発した環状ペプトイドリガンドがタンパク質解析ツールに利用できることを実証し、責任著者として現在論文執筆中のためである。
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今後の研究の推進方策 |
産総研・創薬分子プロファイリング研究センターの夏目徹研究センター長と五島直樹研究チーム長との共同研究を引き続き行い、天然物を模したペプチドライブラリーからのリガンド探索を推進する。 また、新学術領域内の共同研究として、京都大学の入江一浩教授と村上一馬准教授との共同研究を進め、PKCを標的とする、天然物を模したペプチドライブラリーからのリガンド探索を推進する。
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