研究実績の概要 |
26年度の研究成果において、生体環境調和性の高い光触媒、Ru(bpy)3で一電子酸化反応を誘起することによってペプチドやタンパク質が分解すること、ペプチド分解にはアミノ酸配列に依存性があることを見出した。そこで、平成27年度にかけて、細胞内に送達されて機能するタンパク質分解光触媒を開発すべく、標的へのリガンドを連結した触媒の合成、細胞内標的タンパク質の発現量変化の解析を行った。 標的タンパク質として、上皮細胞増殖因子チロシンキナーゼ(EGFR-TK)を選択し、そのリガンドとしてアニリノキナゾリン骨格を有するイレッサを選択し、イレッサにRu(boy)3を結合させたリガンド結合型光触媒を分子設計し、その合成に成功した。この光触媒を用いて、EGFR-TKに対する標的タンパク質ノックダウン実験を行った。N,N-dimethylamino-N’-acyl phenylenediamine(TRT)の非存在下では、リガンド連結型のRu(bpy)3光触媒は一重項酸素の生成による酸化的なタンパク質ノックダウンを誘導することを見出した。一方で、同化合物存在下では、その反応は抑制されつつ、チロシン残基上でのタンパク質ラベル化反応が進行した。また、細胞内のタンパク質を標的にした実験系においても、標的のタンパク質ノックダウンとラベル化反応を外部刺激により制御できることが分かった。
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