研究領域 | 天然物ケミカルバイオロジー:分子標的と活性制御 |
研究課題/領域番号 |
26102732
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
藤本 ゆかり 慶應義塾大学, 理工学部, 教授 (00362616)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 複合脂質 / 有機合成 / 免疫調節 / 脂質抗原受容体 / 国際研究者交流 / ドイツ |
研究実績の概要 |
免疫活性化および調節機構において、微生物由来分子あるいは類縁分子による自然免疫機構の活性化は、獲得免疫系の活性化に重要な役割を行っていることが知られているものの、その連携機構については未だ不明な点も多い。本研究では、特にTh細胞の分化調節等、獲得免疫機構のバランスの調節に重要な役割を果たしているCD1 ファミリータンパク質について、新規リガンドの合成と合成化合物を用いた機能解析を進めている。2014年度は、まず、CD1d を介した Th1細胞選択的 NKT 細胞活性化を誘導することが知られている原虫由来のイノシトールリン脂質および類縁体の全合成に成功し、その糖鎖含有構造の合成法確立を行った。また、得られた化合物を用いヒトおよびマウスの細胞を用いNKT細胞の活性化等の活性測定を行い興味深い結果を得ており、協同研究者と共に、種々の疾患への治療への可能性についても解析している。他の生物種に存在している類縁構造の合成についても進めており、生体系において細胞膜構成成分である複合脂質の生体防御機構における機能、特に脂質抗原受容体を介した獲得免疫調節に関わる機能の解析を行っている。 一方 CD1 の機能制御を可能とする、強い活性あるいは選択的 T 細胞分化につながるリガンドの創製を目指し関連化合物の合成法開発を行った。研究の展開においては、各分野の最先端を担う領域参画メンバーとともに共同研究も推進し、新たな領域の開拓を推進する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画の目標を順調に達成しており、18件の学会報告を行った。現在、2014年度の成果に基づいた内容について、さらに数件の論文投稿準備についても進めている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究においては、前年度の成果に基づき、まずCD1d を介した Th1細胞選択的 NKT 細胞活性化を誘導することが知られている原虫等由来の糖脂質あるいは類縁構造の全合成と機能解析を進める。一方、脂質抗原受容体であるCD1の新規リガンド探索のため、上記CD1dリガンド構造の他、微生物由来の特異な構造を持つ複合脂質等の種々の化合物の合成と解析を行い、T細胞の機能制御の鍵となるリガンド発見と創製を目指す。 まずCD1d 天然リガンドの合成について、下記の合成、解析を進める。 1) 原虫由来複合糖脂質の全合成・活性構造の解析:前年度の新規合成手法開発の成果に基づき、NKT 細胞 の活性化機構の解析のため、CD1d を介してNKT細胞の活性化をすることが最近見出された原虫由来の特異な構造を持つイノシトールリン脂質を含有する糖脂質構造の合成手法開発と類縁体合成を行う。合成化合物について、サイトカイン誘導活性を測定し、構造-活性相関を解析するとともにその機能解析を行う。詳細な生物活性については、共同研究による解析についても進めるとともに、領域内で開発された新規手法を展開する。 2) アレルギー性疾患や癌の免疫治療を目指した新規 NKT 細胞活性化分子の創製:CD1dリガンド複合体の結合様式に基づいた新規リガンド開発を行い、そのサイトカイン誘導活性を利用した新規な NKT 細胞活性化分子の創製を目指す。 一方、種々の微生物および宿主由来の複合脂質について、イノシトール含有脂質あるいは特異なリン脂質を中心に、合成例のない化合物の合成法開発をすすめ、CD1ファミリータンパク質の新規リガンドとしての解析を行う。以上の研究により、生体防御機構の解析を進めるとともに、免疫調節を可能とする分子の発見・創製を目指す予定である。
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