公募研究
1)前年度までにL-アゼチジンカルボン酸の大量合成法を確立できたことから、本年ではデオキシムギネ酸 (DMA) 合成の更なる効率化を検討した。DMA合成の最大の問題は、精製に樹脂を大量に使用することであった。そこで、樹脂による精製を行わない合成法を検討した結果、ノシル基を導入することで再結晶によりDMAが精製できることが分かった。現在、この手法を用いてフィールド実験に必要なDMAの大量合成を進めている。2)ムギネ酸・鉄錯体トランスポーターの3次元構造を解明するために、トランスポーター阻害剤の開発を前年度より引き続き行った。前年度までに、クリック反応を介してかさ高い置換基をムギネ酸に導入することに成功していた。そこで本年度では、構造的に多様なかさ高い置換基を種々導入し、計20種類の阻害剤候補品を得た。それらの阻害剤候補品のうち、鉄イオンとの錯体を形成したものは3種であり、そのうちの一つがトランスポーターの通過を阻害した。放射性同位体鉄を用いた阻害実験において、マロンアミド型の置換基がトランスポーターのキャップとして機能することを見いだした。現在、この阻害剤とトランスポーターとの共結晶化を行っている段階である。また、トランスポーターの通過を阻害する官能基(マロンアミド)が見いだされたことから、この置換基への光反応性基の導入についても検討し、トランスポーター標識用のムギネ酸誘導体を新たに合成した。今後はこのものを用いて、トランスポーターの標識が可能であるか検証を行う。
2: おおむね順調に進展している
本年度までにDMAの大量合成とトランスポーター阻害剤の開発を行う予定であったが、どちらの課題も予定どおり進行している。トランスポーター阻害剤については、既に放射性同位体鉄の取り込み実験によって阻害効果を明らかにしており、現在はトランスポーターとの共結晶化実験およびトランスポーター標識試薬の開発にまで進展している。これらの課題は本年度での予定であったことから、当初の計画以上に進展しているといえる。一方、DMAの大量合成については、現在合成法の確立に至った段階であり、本年度で実際に大量合成を実行するため、おおむね順調に進展しているといえる。
当初の予定どおり、DMAを合成しまずは土壌での実験を行う。実際の土壌でのDMAの添加効果を明らかにし、DMAの肥料としての効果を明らかにする。また、トランスポーターに関しては、引き続き共結晶化を行うと共に、光反応性基を導入したムギネ酸阻害剤を用いて、トランスポーターとの結合実験を行う。これにより、トランスポーター標識の新たな概念を提供する。
すべて 2015 2014
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