公募研究
エリスロマイシンA (EMA)は、抗菌作用、モチリン様作用、抗炎症作用・免疫調節作用の三つの作用が報告されている。その中において、抗炎症作用・免疫調節作用に関しての標的タンパク質は未だ同定されていない。その原因の一つとして、EMAが多様な作用を示す故に標的タンパク質の同定が複雑化するためと考察できる。一方で、創薬の観点から、EMA誘導体を抗炎症薬として使用する場合、抗菌作用由来の耐性菌出現が大きな懸念となるため、抗菌活性を持たない薬剤が期待されている。以上の二点の課題を解決するために、研究代表者は、抗菌作用・モチリン様作用を完全に消失させ、抗炎症作用・免疫調節作用のみを発現したEMA誘導体EM900を創製した。さらに、EM900は動物実験においても優れた効果を示し、現在臨床試験を開始するための準備段階にある。まず、研究代表者らは、EM900の標的タンパク質の探索を行った。半田ビーズと固定化するためにEM900のアミン体を百数十mg合成した。その後、EM900と半田ビーズを固定化し、ライセートとのプルダウンアッセイを行った。その結果、EM900に特異的に結合するタンパク質(以下EMBPと略す。知的財産の関係上記述することができません。)を見出すことに成功した。現在、標的タンパク質EMBPの抗炎症作用への関わりの解析を行っているところである。一方で、EM900と活性のプロファイルが異なる誘導体ならびにEM900水酸基保護体の標的タンパク質の探索も計画している。これを達成するために、それぞれのアミン体の合成を行う必要がある。すなわち、EM900誘導体から水酸基の保護、アミノ基の導入、脱保護を経てアミン体を数十mg合成した。現在、EM900誘導体と半田ビーズを固定化、ライセートとのプルダウンアッセイを行う段階にある。
3: やや遅れている
研究代表者は、EM900の標的タンパク質の探索を行った結果、EM900に特異的に結合するタンパク質(以下EMBPと略す。知的財産の関係上記述することができません。)を見出すことに成功した。本年度、この標的タンパク質EMBPの抗炎症作用への関わりを解析しているが、その解析に予想以上に時間がかかっており、達成度がやや遅れていると判断した。
EM900の標的タンパク質の確認、作用機序の解明を行った後、出来るだけ早い時期にEM900の標的タンパク質を固定化したアフィニティ磁性微粒子を用い、微生物資源から新規天然物の探索を実行する。北里大学の当研究グループが保有する稀少微生物培養液などの微生物資源を基盤としたライブラリーは、今日まで有用な生理活性天然物(エバーメクチン、スタウロスポリン、ラクタシスチンなど多数)を産出してきた実績がある。さらに、天然物誘導体ライブラリーは上記の天然物ライブラリーのケミカルスペースを補完し、新規活性物質の発見の確立を高めると云える。ここで見出された微量有用物質を大量培養、または有機合成等により大量に取得して、同定し、詳細に活性を評価する。また、得られた有用物質を出発に様々な誘導体を合成し、より有効な有用物質を創製する。
すべて 2015 2014 その他
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (1件) 備考 (1件)
J. Infect. Dis.
巻: - ページ: in press
10.1093/infdis/jiv157
Tetrahedron
doi:10.1016/j.tet.2015.01.030
http://seibutuyuuki.sakura.ne.jp