研究実績の概要 |
当研究室では、これまでに、特定波長の光照射下、光励起し、活性酸素種を発生させることで生体高分子(核酸、タンパク、及び糖鎖)を効果的に光分解する有機小分子の開発と応用に関する研究を行ってきた。一方、ルテニウム錯体のようなある種の有機金属錯体が特定波長の光照射下、核酸の分解活性やレドックス触媒活性を示す事が報告されている。そこで本研究では、タンパクを光分解する新しい有機金属錯体の探索を行った。その結果、タンパクを光分解する光感受性分子の候補として、長波長紫外光(~365nm)に光吸収滞を有する金属錯体Co(en)3Cl3 (1)、 Co(NH3)6Cl3 (2)、 K[VO(O2)2(phen)] (3)、 NH4[VO(O2)2(phen)] (4)、及び Rh(phen)3Cl3 (5)、および[Ir{dF(CF3)ppy}2(dtbpy)]PF6 (6)を選択し、BSA及びLysoに対する光酸化分解活性を評価した。その結果、長波長紫外光(365 nm, 100 W)及び可視光(370-780 nm, 100 W)の照射下、金属錯体6のみがBSA及びLysoを効果的に光酸化分解する事を初めて見出した。次に、6が発生する活性酸素種の同定を、スピントラッピングEPR法用いて検討した結果、6が光照射下、一重項酸素を発生する事を見出し、一重項酸素が6のタンパク光酸化分解の一つの活性種である事を明らかにした。
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