研究領域 | 天然物ケミカルバイオロジー:分子標的と活性制御 |
研究課題/領域番号 |
26102739
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研究機関 | 上智大学 |
研究代表者 |
神澤 信行 上智大学, 理工学部, 教授 (40286761)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | メチオニン合成酵素 / 植物 / 就眠運動 |
研究実績の概要 |
東北大学の上田教授らは、生体内の弱い結合を検出しうるCompact Molecular Probe (CMP)法の発想に基づき、マメ科植物の葉を開かせるLeaf-Opening Factor (LOF)の標的分子としてメチオニン合成酵素(MetE)を見いだした。昨年度我々は、LOF/MetE結合の生理的意義を明らかにする目的で、MetE下流のシグナルカスケードに着目し、MetEとの結合がメタ解析から示唆されている14-3-3タンパク質の関与を中心に研究を進めた。具体的には、(1)リン酸化制御の解析、(2) 14-3-3タンパク質との結合解析、(3) エチレン合成経路への関与の解析の3点を軸として解析を進めた。また、MetE特異的な抗体親和性カラムを用いて、(4)MetEと結合する新奇タンパク質の検索も行った。 (1)のリン酸化制御に関しては、二次元電気泳動により日周に伴う変化を解析した。日周に伴いリン酸化状態が変化することが確認された。(2)に関して、他研究室から報告されているメタ解析の結果ではMetEと14-3-3タンパク質の結合が示唆されている。今年度、酵母two hybrid system (Y2H)を用いて実施したin vitroでの結合実験からはMetEと14-3-3タンパク質の直接的な結合は証明できなかった。(3)に関して、エチレン合成に関与するACCを切り口から吸入させ、就眠への影響を調べたところ、ACCにはLOFと同様にエビスグサの葉を開かせる活性があった。しかし、他のマメ科植物との比較から、ACCに対する応答は植物種によって異なっていることがわかった。(4)に関して、抗体の親和性吸着に基づく探索を繰り返したが、結合を示唆するシグナルは得られたが、収量が悪く、関連因子を同定するには至っていない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
主要な実験の部分で、当初予想していた結果に対して否定的な結果が得られている。本年度は継続し結果が期待できる部分については現状のままで進めるが、積極的に異なる手法を取り入れて目的を達成しようと考えている。 概要に記載した(1)に関しては、現状でもリン酸化の関与を示唆する結果が得られている。(2)に関しては当初予想した結果とは異なる結果が得られている。14-3-3自体に複数のアイソフォームがあることが知られており、アイソフォーム間で異なる機能に関与することが報告されている。そこで、現在は異なるアイソフォームのクローニングを進めている。 (3)に関して、メチオニン合成経路との関与が示唆される結果が得られている。(4)に関して親和性をベースとした探索を諦め、新たな手法で関連因子の発見を行おうと考えている。 全体として、ほぼ予想通りのペースで研究は進行しているが、一部得られた結果が予想と異なることから、今後あらたな対応が必要である。
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今後の研究の推進方策 |
概要に記載した(1)に関して、2014年度は日周とリン酸化との関係を中心に解析を進めた。本年度はさらに、メチオニン合成との関連性を明らかにする目的で、メチオニン合成の阻害剤や活性化に関与する物資を投与することでリン酸化状態がどのように変化するかを解析する。解析はまずは簡便な二次元電気泳動法により解析を試み、候補となるものについてはリン酸化部位を特定することで、リン酸化を介したシグナルカスケードを明らかにする。(2)に関して、現在14-3-3アイソフォームのサブクローニングを含め追加実験の準備を進めている。また、Y2Hだけに頼らず、タバコの葉を用いた一過的な発現手法を用い、関連因子との相互作用を明らかにしていく計画である。(3)に関して、薬剤を使った就眠への影響を継続して調べていくと共に、どの様な流れで就眠と関与するのかを明らかにするため、下流にある事が予想される遺伝子発現を中心にACCに対する応答性を調べる。(4)に関して、抗体の親和性吸着に基づく探索を繰り返したが、収量が十分に得られず、関連因子を見出すには至っていない。そこで本年度はMetEを過剰発現する組替え植物の作製、およびタグ付きのMetEを発現する植物を作製する事で、その表現型の変化から関連因子を調べ、タグを用いて新奇関連因子の探索を行う計画である。なおゲノムが利用可能であることが大きなメリットとなることから、今回はゲノム配列が報告されているミヤコグサを用いてMetE関連因子の探索を行う。
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