東北大学の上田らにより開発、改良が進められているCompact Molecular Probe (CMP)法は、生体内のこれまで見過ごされていた弱い結合に基づく生理現象の発見につながることが期待されている。上田らは、エビスグサの葉を開かせるLeaf-Opening Factor (LOF)の標的分子としてメチオニン合成酵素(MetE)を見いだした。我々は昨年度までに、LOF/MetEの結合がどのような経路を経て葉を開かせるという現象を引き起こしうるのかを調べた。その結果、MetE自体が日周で発現量が変化すること、またリン酸の制御を受けることなどが明らかになった。また結合タンパク質の候補として14-3-3タンパク質との相互作用について、酵母two hybrid system (Y2H)を用いて調べたところ、文献では両者の結合が示唆されていたものの、実際には積極的に結合を示唆する結果は得られなかった。またMetEが触媒する主経路はMetの生合成であり、その経路の先にはMetを基質としたエチレンの生合成がある。エチレン生合成の最終前駆物質であるACCに着目し経路の解析を行った。 本年度は、再度14-3-3タンパク質とMetEとの結合について、GST融合14-3-3タンパク質を用いて解析した。その結果両者の結合が確認できた。Y2Hの様な直接結合を見る系では結果が得られなかったことを考えると、両者の結合には第3の因子の関与が考えられた。また、エチレン生合成経路との関連を調べるため、エチレンが機能する下流に存在する遺伝子であるethylene response factor (ERF)の発現を調べたところ、ACC添加とLOF添加では発現の様子が異なった。上記のとおり、LOF/MetEは結合し、その作用は分子レベルでは比較的弱い刺激をゆっくりと伝え、葉を開かせていることが考えられた。
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