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2014 年度 実績報告書

天然由来ジペプチド様物質ネガマイシンを戦略分子とする創薬基盤研究

公募研究

研究領域天然物ケミカルバイオロジー:分子標的と活性制御
研究課題/領域番号 26102740
研究機関東京薬科大学

研究代表者

林 良雄  東京薬科大学, 薬学部, 教授 (10322562)

研究期間 (年度) 2014-04-01 – 2016-03-31
キーワード薬学 / 創薬化学 / 生体分子 / ペプチド化学 / 有機化学
研究実績の概要

平成26年度は、未熟終止コドン読み飛ばし活性(リードスルー活性)を有する化学プローブの獲得をめざし、これまで獲得した高活性なネガマイシン誘導体を基盤とした構造活性相関研究(SAR)を展開した。即ち、本SAR研究によりリードスルー作用発現機構の解明に向け有効な化学プローブ創製の手がかりを模索した。実際には、天然物であるロイシル-3-epi-デオキシネガマイシンのロイシン部分に注目し、独自開発した高活性誘導体TCP-112の3位アミノ基に天然および非天然アミノ酸など種々のアシルユニットを重点的に導入した誘導体を合成した。これらの誘導体の活性を評価することで、高活性な誘導体の獲得をめざした。先ず、結合部位との水素結合の可能性を模索するため酸性および塩基性アミノ酸を導入したが、高活性誘導体は得られなかった。そこで次に、疎水性相互作用の向上を期待して脂肪族および芳香族アミノ酸を導入したところ、培養細胞での評価において、側鎖に長鎖アルキル基を有するアミノ酸を導入した誘導体がネガマイシンより約10倍強いリードスルー活性を示すことを見いだした。このことは、リボゾーム上には誘導体の3位アミノ基周辺を認識できる比較的大きな空間があり、側鎖に大きな構造を有する非天然型アミノ酸を3位アミノ部分に導入しても、活性を維持・向上できる可能性を示唆している。したがって、この結果に基づき当該部分に光親和性標識構造(ベンゾフェノン)を有するアミノ酸誘導体を導入した新規TCP-112誘導体を合成した。次年度において、培養細胞系または無細胞タンパク質合成系にて当該ケミカルプローブのリードスルー活性を評価し、プローブとしての有効性を確認したい。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

平成26年度は、2つの方向性をもって研究を遂行した。ひとつは、リードスルー作用機構解明研究に利用可能な化学プローブ創製を目的とした構造活性相関研究(SAR)である。この研究では、ネガマイシン誘導体TCP-112の3位アミノ基に、側鎖に長鎖アルキル基を有するアミノ酸を導入した誘導体が、ネガマイシンより約10倍強いリードスルー活性を示すことを明らかとした。この結果から、TCP-112の3位アミノ基に非天然型アミノ酸を導入できることが解り、高活性を維持したケミカルプローブの創製の糸口を見出すことができた。したがって、本研究はおおむね順調に進んでいると言える。もうひとつは、TCP-112の化学プローブ化の検討である。上記知見に基づき当該3位アミノ基に光親和性標識基としてベンゾフェノ構造を有する非天然型アミノ酸を導入した誘導体を実際に合成した。本誘導体のリードスルー活性は現在評価できていないため、この点では若干の遅れが出ている。早急に培養細胞系または無細胞タンパク質合成系でリードスルー活性を評価し、化学プローブとしての有効性を確認することで、次年度に繋げていきたい。

今後の研究の推進方策

平成27年度は、ネガマイシンケミカルプローブを用いた光親和性標識により、r-RNAもしくは関連蛋白質に対するネガマイシンの結合部位探索研究を行い、これを足がかりにリードスルー作用機構解明に挑戦する。方法としては、多剤耐性に関わる遺伝子を破壊した多剤超感受性出芽酵母や無細胞蛋白翻訳系を用い、リードスルー活性を定量化できる評価系を構築し、ネガマイシンケミカルプローブを用いた光親和性標識を実施する。クリックケミストリー等を活用し、標的分子(r-RNAまたは蛋白質)の同定、その結合部位の特定に挑戦する。光標識における分子標的が、リボソームを構成する蛋白質である場合は、標識体をアフィニティー精製等で単離し、質量分析により分子標的の同定を試みる。酵母の系で結合蛋白質が単離・同定できた場合は、当該結合蛋白質が、リードスルー活性の標的分子であるか否かを更に検証する。即ち遺伝子破壊や過剰発現、変異導入などの遺伝学的手法に基づいて検証することで、ネガマイシン誘導体結合蛋白質の特徴を明らかにする。一方、分子標的がr-RNAの場合は、RNA footprint法などでプローブで修飾された核酸同定を試みる。r-RNAのE-siteのモデルとなるオリゴRNAを合成し、ネガマイシン誘導体が2本鎖オリゴRNAに与える安定化効果を融解温度測定により評価する。また、単離リボソームとネガマイシン誘導体によるChemical footprintingも検討し、ネガマイシン誘導体の結合部位を同定する。生物活性を有する化学プローブを利用したケミカルバイオロジー展開により、ネガマイシンの分子標的、その結合部位およびリードスルー作用機構の解明を試みたい。また27年度も、作用機序解明に有効な化学プローブの創製も継続的に実施する予定である。

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2014

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (5件) 図書 (1件)

  • [雑誌論文] Discovery of Natural Products Possessing Selective Eukaryotic Readthrough Activity: 3-epi-Deoxynegamycin and Its Leucine Adduct2014

    • 著者名/発表者名
      Akihiro Taguchi, Keisuke Hamada, Masaya Kotake, Masataka Shiozuka, Hidemasa Nakaminami, Thanigaimalai Pillaiyar, Kentaro Takayama, Fumika Yakushiji, Norihisa Noguchi, Takeo Usui, Ryoichi Matsuda, Yoshio Hayashi
    • 雑誌名

      ChemMedChem

      巻: 9 ページ: 2233-2237

    • DOI

      10.1002/cmdc.201402208

    • 査読あり
  • [学会発表] リードスルー作用を有するネガマイシン誘導体のC末端部位における構造活性相関研究2014

    • 著者名/発表者名
      田口晃弘、濵田圭佑、小竹優也、塩塚政孝、会田 俊、生澤俊太郎、村上沙織、鈴木奈々、高山健太郎、薬師寺文華、野々村禎昭、臼井健郎、松田良一、林 良雄
    • 学会等名
      第32回メディシナルケミストリーシンポジウム
    • 発表場所
      神戸
    • 年月日
      2014-11-26 – 2014-11-28
  • [学会発表] エステル型ネガマイシン誘導体の合成とそのリードスルー活性評価2014

    • 著者名/発表者名
      会田 俊、濵田圭佑、小竹優也、生澤俊太郎、塩塚政孝、野々村禎昭、田口晃弘、高山健太郎、薬師寺文華、臼井健郎、松田良一、林 良雄
    • 学会等名
      第58回日本薬学会関東支部大会
    • 発表場所
      東京
    • 年月日
      2014-10-04 – 2014-10-04
  • [学会発表] Structure Activity Relationship Study of (+)-Negamycin for Readthrough Activity at Duchenne Muscular Dystrophy2014

    • 著者名/発表者名
      Akihiro Taguchi, Keisuke Hamada, Masaya Kotake, Masataka Shiozuka, Kentaro Takayama, Fumika Yakushiji, Takeo Usui, Ryoichi Matsuda, Yoshio Hayashi
    • 学会等名
      33rd European Peptide Symposium
    • 発表場所
      Sofia, Bulgaria
    • 年月日
      2014-08-31 – 2014-09-05
  • [学会発表] ネガマイシン誘導体におけるC末端部修飾とリードスルー活性への効果2014

    • 著者名/発表者名
      濵田圭佑、田口晃弘、小竹優也、生澤俊太郎、会田 俊、塩塚政孝、野々村禎昭、高山健太郎、薬師寺文華、臼井健郎、松田良一、林 良雄
    • 学会等名
      創薬懇話会2014
    • 発表場所
      岐阜
    • 年月日
      2014-07-10 – 2014-07-11
  • [学会発表] Structure activity relationship study of (+)- negamycin derivatives at the C-terminal part as a readthrough drug2014

    • 著者名/発表者名
      Keisuke Hamada, Akihiro Taguchi, Masaya Kotake, Suguru Aita, Shuntaro Ikezawa, Masataka Shiozuka, Yoshiaki Nonomura, Kentaro Takayama, Fumika Yakushiji, Takeo Usui, Ryoichi Matsuda, Yoshio Hayashi
    • 学会等名
      18th Korean Peptide Protein Symposium
    • 発表場所
      Busan, South Korea
    • 年月日
      2014-07-07 – 2014-07-08
  • [図書] ファルマシア2014

    • 著者名/発表者名
      田口晃弘、濵田圭佑、林 良雄
    • 総ページ数
      5
    • 出版者
      日本薬学会

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公開日: 2016-06-01  

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