研究実績の概要 |
これまでに、ポリアミンがDNAやRNAと結合して、細胞増殖に寄与したり、エピジェネティクスを制御することが知られている。そこで、報告者が見出した共役イミンの[4+4]反応により生成する、8員環のエピジェネティクスに関する効果を検討した。生体内でポリアミンが自身でアクロレインを放出して8員環を形成しているならば、これらの化合物もエピジェネティクスを自在に制御しているのではないかと想起した。平成27年8月までの研究期間内で、様々な8員環を作用させた細胞に対して、抗体を用いた蛍光観察、あるいはその抽出物をWenstern blotting で検討した。その結果、1,5-ジアザシクロオクタンは、ヒストンの特定リジン残基のメチル化レベルを顕著に向上させることを見出した。さらに、これらメチル化されたヒストンは核小体へと速やかに移行することを明らかにした。一方、末端に水酸基やアミノ基を持つアミンとa,b-不飽和共役アルデヒドとの新規反応に基づいて、キラルなポリアミン誘導体を合成することに成功した。これらキラル化合物とアクロレインとの[4+4]反応によって生成する8員環ライブラリーを用いることによって、今後、エピジェネティクスを選択的に制御する化合物やクロマチンの凝集効果を示す化合物を探索する基礎を築いた。
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