公募研究
真菌二次代謝産物由来天然化合物ライブラリーより、neoechinulin B (NeoB)がC型肝炎ウイルス(HCV)複製を抑制することを見出した。NeoBは細胞毒性をほとんど示すことなく用量依存的にHCV複製及びそれによる粒子作成を抑制した。またトランスクリプトーム解析及びレポーターアッセイより、NeoBは肝細胞内のliver X receptor (LXR)の転写活性を特異的に阻害することが明らかとなった。また誘導体解析より、この活性にはNeoB内のジケトピペラジン骨格が重要であることも示唆された。NeoBはLXRに直接相互作用することでその転写活性を阻害し、LXR下流遺伝子の発現調節を脱制御することで、肝細胞内脂質代謝等を修飾すると考えられた。neoechinulin BによりLXR活性を低下させたHCV感染細胞においては、HCV複製の場と考えられている二重膜ベシクル形成が大きく低下していることが観察された。以上のことより、本研究ではNeoBが新規LXRアンタゴニストであることが示唆された。またNeoBによるLXR不活性化はウイルス複製の場形成低下を介してHCV産生を減少させると考えられた。一方本研究では同じライブラリーより、B型肝炎ウイルス(HBV)感染を低下させる新規三環系ポリケチドを同定し、これをvanitaracin Aと命名した。vanitaracin Aは細胞毒性を示すことなく用量依存的にHBV侵入を低下させ、その活性はIC50 = 0.61 uM, CC50 > 256 uMであった。生化学的アッセイ及び表面プラズモン共鳴により、vanitaracin AはHBV受容体であるNTCPに直接相互作用するリガンドであることを明らかにした。vanitaracin Aは様々な遺伝子型のHBV感染を阻害し、また同じくNTCP依存的に感染するD型肝炎ウイルス感染も阻害する一方で、NTCP非依存的なHCV感染にはほとんど影響を与えなかった。このようにvanitaracin Aは新たな抗HBV剤の有用なリード化合物になると期待される。
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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