研究実績の概要 |
電子顕微鏡解析と計算に基づく単粒子解析法を主な解析技術として、TRPチャネルと天然物リガンドの複合体構造解析を推進する。結合動態の詳細な可視化を行い、多彩な天然物リガンドに応答するTRPチャネルのマルチシグナル活性化機構の解明を目指している。負染色電子顕微鏡画像から再構成したTRPA1の構造に対し、TRPA1に特異的に作用する新規リガンドの結合可視化を行った(領域研究者との共同研究)。電子顕微鏡解析から得られた結合ドメインは、生化学実験の結果ともよく一致しており、両データを合わせることで結果の信憑性を高めることができた。TRPA1チャネルは他にもわさび成分のアリルイソチオシアネートや、カフェイン、プロスタグランジンJ2、分子状酸素、赤外線、17度以下の低温刺激など様々な刺激に応じて開口する。これら多彩な刺激がどのような機構で同一のチャネルを活性化させるかの理解を目指し、マルチシグナル活性化機構を探る。また細胞内の活性酸素受容に働くことが明らかになりつつあるTRPM2チャンネルに関しても解析を進めており。STEM顕微鏡を用いた複合体分子量の絶対量定量やクライオ試料からの構造解析を行った。電子顕微鏡解析には金粒子ラベル法が一般に用いられるが、特異抗体Fabや小分子化されたアビジン分子を用いて、画像処理上で結合した小分子を提示する方法も検討し、他の膜蛋白質複合体の解析にも用いた。 更に本技術を脂質二重膜を介したタンパク質輸送に働く、Secトランスロコン複合体の解析に用いて、その構成因子であるSecDF膜タンパク質のペプチド膜に伴って起こる構造変化を分子レベルで示し、論文化した(J Struct Funct Genomics, 5, 117, 2014)。また本技術の普及を目的に広く研究者が目を通す科学雑誌に概説を記した(実験医学、32,540,2014)。
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