本研究の目的はアクティブマターの集団運動として細胞組織を理解することである。その中でも、自発運動する粒子・液滴の集団運動に注目し、その理論的研究を行い、特に、Janus (ヤヌス)粒子の集団運動について主に研究を進めた。当初は、個々の粒子の変形を含めた集団運動の解析を試みていたが、2014年6月にイギリスのブリストル大学を訪問し、Tanniemola Liverpool教授と議論をきっかけに、回転の自由度だけに注目したJanus粒子の運動にまず注目することが適切であることを認識し、2015年の9月にも再び訪問して集団運動の解析を進めた。 Janus粒子は一様なエネルギー注入によって自発的な運動を生み出すことができる。理論的には、粒子の周りに生成する濃度場の不均一性によって粒子近傍に力学的ストレスを生じ、流れ場を形成して運動する。Janus粒子は、濃度場の重なりによる相互作用と流体力学的相互作用によって運動速度と方向を変える。そして粒子表面の不均一性から、球形であっても方向を持っている。二粒子間の相互作用を遠方と近傍に分け、それぞれ計算し内挿することによって一般的な配置における並進速度と回転速度を近似的に導出している。この結果を用いて、多数の粒子の運動を数値的に解析することで、全体が整列する現象を見いだしそのメカニズムを明らかにした。本内容は現在論文作成中である。 また、二次元での閉じ込められた自発運動粒子の運動について、回転や振動運動、準周期運動について理論的な解析を進め、結果はJournal of Chemical Physics誌に掲載済みである。さらに、マランゴニ効果による流れ場の存在下における化学物質の実効的な拡散についての理論的研究も進め、論文投稿中である。ここで、単純な摂動を超えた領域で、拡散係数の数桁にわたる大幅な増大を定量的に予測することが可能になっている。
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