研究領域 | ゆらぎと構造の協奏:非平衡系における普遍法則の確立 |
研究課題/領域番号 |
26103504
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
齋藤 一弥 筑波大学, 数理物質系, 教授 (30195979)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ガラス転移 |
研究実績の概要 |
アルキル基置換DCHMの合成法の確立とブチル基置換DCHMの基礎物性の評価 有機合成化学者の協力も得つつ,シクロヘキシル基の外縁部をアルキル基で置換したDCHMを合成する方法を確立した.この方法では試薬を変更する事により異なる長さのアルキル基置換体の合成が可能である.この方法により,ブチル基で置換した2種類(トランス・トランス体およびシス・シス体)の化学修飾DCHMを合成した.これまでに,トランス・トランス体について結晶構造解析,赤外分光,示差走査熱量測定を実施し,無置換体同様に結晶中で4量体を作っていると考えて矛盾が無いこと,急冷によりガラスを形成することを確認した.今後,液相における会合状態の特性かを経て,ガラス転移の比較を計画している.
DCHM および関連化合物のガラス転移挙動の精査 これまでにガラス転移を見出し,熱測定の結果を報告している,DCHM およびシクロヘキシル基が一つ多いTCHM(液相では球形2 量体を温度低下につれて形成)について,動的熱容量[温度変調示差走査熱量測定(DSC)],誘電分散,動的粘弾性の,動的物性の測定を行い,系統的比較の基本物質としてガラス転移の性格を明らかにした.具体的には,それぞれの測定手法で捉えられた緩和現象・緩和時間を比較検討した.公表準備中である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
合成法の検討に思ったより時間がかかったものの,異なるアルキル鎖を持つ置換DCHMを合成できるめどがついた.
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今後の研究の推進方策 |
既に2化合物を合成できており,これらのガラス転移を検討することにより当初の目的は達せられるものと期待している.すなわち,通常のDSC 測定,誘電率測定,赤外分光測定,により液相における会合挙動を明らかにする.解析にはこれまでに用いてきた6 状態モデルが利用できるものと想定している.6 状態モデルは,赤外分光により得られる水素結合数,水素結合の開裂による熱容量異常,環状会合体形成による誘電率の異常な温度依存性,を統一的かつ簡明に記述するモデルである.結晶化が可能な試料については結晶構造解析も行う.是を踏まえ,動的熱容量測定,誘電分散測定,動的粘弾性測定をおこない,それぞれの測定手法で捉えられた緩和現象・緩和時間を比較する.適切と思われる化合物1 種ないし2 種については断熱型熱量計による精密熱容量測定(1 試料あたり約2ヶ月を要する)を行う.ガラス転移挙動を相互に比較する.理論モデルとの比較に必要となる粒子間相互作用についての情報は,融解エンタルピー,力学物性などから推定する.それらを元に理論モデルと比較・検討する.必要に応じて領域内の理論家と討論の機会を持ち,議論を深めたい.
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