研究領域 | ゆらぎと構造の協奏:非平衡系における普遍法則の確立 |
研究課題/領域番号 |
26103519
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
小林 未知数 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (50433313)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | トポロジカル欠陥 / スピノル・ボース・アインシュタイン凝縮 / Kosterlitz-Thouless転移 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、スピノル・ボース・アインシュタイン凝縮の系を対象として、様々な種類のトポロジカル欠陥のダイナミクスが、系全体の重要な性質を担うような状況を理論的に作り出し、新規な現象を探索することである。 平成26年度には主に2次元系におけるスピノル・ボース凝縮が、有限温度の平衡状態にある中で、量子渦のトポロジカルな性質およびその平衡ダイナミクスが系の相転移現象に及ぼす効果を集中的に研究した。2次元系では、3次元系で見られるような対称性の破れに伴う熱力学的な相転移は起こらず、熱ゆらぎを介して生成した量子渦対が、対として束縛状態にあるか、乖離して自由に運動できるかというKosterlitz-Thouless(以下KT)転移が起こり、熱力学量ではなく系の流れに対する動的な応答に対する特異性が生じることが知られている。したがってこの転移に関しては量子渦が主要な枠割を果たしており、量子渦のトポロジーはKT転移に大きな影響をおこぼすであろうことが期待される。 今回対象にしたのは、磁場あるいはレーザーによって作られた、2次ゼーマン場(以下q)のある、スピン1スピノルBECである。この系ではスピンに依存した粒子間相互作用の強さと2次ゼーマンの符号によって6つの特徴的な渦領域に分けられる。6つの領域に対して、以下に示すような渦のトポロジーを大きく反映した、非常に特徴的なKT転移の兆候を得ることができた。 反強磁性かつqが正の場合:スカラーボース凝縮と同じKT転移、反強磁性かつqが負の場合:スピンと位相が結合したKT転移、反強磁性かつqが0の場合:スピン部分に関して渦のチャージがZ2となりKT転移が起こらない、強磁性かつqが正の場合:位相とスピンの独立したKT転移、強磁性かつqが負の場合:スピンの熱力学転移と位相のKT転移が同時に起こる、強磁性かつq=0の場合:KT転移が起こらない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の目的である、スピノル・ボース・凝縮の量子渦のトポロジーを大きく反映したような現象を1つ見つけることができた。また、量子渦のトポロジーを調べる際に計算するべき最も重要な物理量が、渦のトポロジカルチャージ、流れに対する線形応答であることをつきとめることができた。またこれらを計算するための数値シミュレーションのコードを完成させることができ、今語の研究へ実装する準備もできた。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は平衡状態の系を調べることが主な研究であったが、今後は26年度に完成させた数値シミュレーションの手法を駆使して、特に非平衡定常状態にあるスピノル・ボース凝縮の系に対する、渦のトポロジーの影響を調べるのが主な研究の方向である。
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