現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画していたよりもがん細胞を安定に継代培養する条件の絞込みに時間がかかったため、物理学的なリードアウトの確立は現在進行中のほかの細胞系を用いて行うこととなった。一方で揺らぎ解析については、ハイデルベルク大学・大学病院新生児科のJ. Poeschl教授とのヒト赤血球(成人・新生児)を用いた敗血症モデルの研究を行った。細胞骨格と膜のカップリング強度を入れた解析を導入し、血球細胞のシェア弾性の定量評価に成功し、論文の形でまとめることが出来た(Ito, ...., Poeschl, Tanaka, J. Phys. Chem. B, accepted with minor revisions)。
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今後の研究の推進方策 |
細胞性粘菌などと異なり、葉状仮足を広げた細胞、なかでもがん細胞の形状ダイナミクスを追跡することは難しい。当研究室で開発した、表面近傍の高さプロファイルに高感度で非侵襲的な反射干渉顕微鏡を用いて解析する手法 (Kaindl,.. Tanaka, PLoSONE (2012), Burk,.. Tanaka, Ho, Sci. Rep. (2015)) を駆使して、細胞の形状ダイナミクスの時空間秩序を精密に解析する。昨年度に確立した、接着分子(カドヘリン)の表面密度を精密に制御したSupported Membraneを用いて、胃腺がんの平常ゆらぎのモード解析と運動の解析を行い、がんの進行に特徴的なパターンを抽出することを目指す。 また、胃腺がんの転移に特有の化学誘導物質(ケモカイン)として、本研究では後腹膜、胃大網から放出され胃がん細胞の走化性、転移・生存・がん性を促進するとされる、CXCL12に焦点を当てる。申請者のグループでは、これまで溶解性のCXCL12が造血幹細胞のエネルギー散逸に与える影響を形状ゆらぎのパワースペクトル解析から明らかにした(Burk,.. Tanaka, Ho, Sci. Rep. (2015))ので、ここでは溶液中のCXCL12濃度が、進行度(転移度)の異なる癌細胞の接着と形状揺らぎ、そして遊走の時空間パターンに与える影響を、定量解析する。
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