研究領域 | ゆらぎと構造の協奏:非平衡系における普遍法則の確立 |
研究課題/領域番号 |
26103525
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
坂上 貴洋 九州大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (30512959)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 異常拡散 / 生体高分子 / DNA、染色体 |
研究実績の概要 |
(I)高分子膜のダイナミクス 構成要素(モノマー)が二次元的に重合したシート状の巨大分子を高分子膜(polymerized membrane)といい、しばしば、グラフェンシート、赤血球細胞などのモデルとして考えられる。高分子膜内の適当なモノマーにラベルをし、その軌跡を追跡すると、短時間での個別モノマーの拡散と長時間での系全体の拡散との間の中間時間スケールにおいて、特徴的な異常拡散挙動を示す。これは、個々のモノマーの運動が系全体の内部運動に支配されるためで、同様の現象は高分子鎖でも見られる。本研究では、この現象はどのように記述できるか?また、高分子鎖と比べ、高分子膜のダイナミクスの特徴はどのようなものか?という問いを念頭に研究を行い、以下の成果を得た。(1) 高分子膜では、系全体が平坦になるために、異方性が特に重要となる。モンテカルロ法を用いて高分子膜のシミュレーションを行い、ラベルモノマーの変位を膜面内と面外方向とに分解して、それぞれに対して異なる拡散指数を得た。(2) 様々なサイズの高分子膜における面内および面外方向それぞれの平均二乗変位のデータを動的スケーリング則の形に整理し、異常拡散を特徴付ける指数と、高分子膜の構造を記述する臨界指数との間に成り立つスケーリング関係式を得た。(3) 観測される異常拡散の背後にある物理的なメカニズムを考察し、ラベルモノマーのダイナミクスを記述する一般化ランジュバン方程式を導出した。
(II) ナノドーバーによるDNAの動的圧縮 光トラップしたビーズを用いて、ナノチャネル中に拘束されたDNAを操作する「ナノドーザー系」を構築した(カナダのグループとの協働研究)。このときに見られるDNAの特徴的な圧縮挙動について、理論と実験の両面から研究を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
高分子膜のダイナミクスについては、シミュレーションの結果と理論解析の結果がきれいに一致し、理解を深めることができた。また、ナノドーザー中でのDNAの動的圧縮現象については、当初は計画には含めていなかったものであるが、本研究課題に密接に関連する現象であり、実験、理論の協働により興味深い結果を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、異常拡散を示す系を外力により駆動した場合に見られる非平衡ダイナミクスを中心的な課題として取り組んでいく予定である。
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