公募研究
本研究は、原始惑星系円盤の磁気乱流の強さを見積もる理論モデルを作成し、特にデッドゾーンと呼ばれる磁気的に不活性な領域がどのように広がっているか、またデッドゾーンが円盤の構造にどのような影響を与えるかを明らかにすることを目的としている。これまでの研究で、われわれは原始惑星系円盤の降着速度が与えられた場合の磁場の定常解および、磁場のみの時間発展を求めることに成功している。平成27年度では、円盤の密度構造と磁場構造の時間進化を同時に求めた。特に、磁場の移流速度がガスの移流速度よりも速い場合に着目して計算を行った。その結果、たとえ初期に円盤を貫く磁束が星間磁場と同程度であっても、磁束が中心星に向かって集中していくに従い、円盤内側の磁場強度が増大する。磁束が集中した場所では円盤ガスの降着が促進される。円盤が進化していくに従い円盤内側の磁場の強さはガス圧と比べて相対的に増加し、その結果、円盤内側にガスのない領域が生じることが示された。これは、円盤内側のデッドゾーンでは円盤密度が増大するというこれまでの理解を覆すものである。また本研究の目的として、得られた円盤構造を高解像度撮像観測の結果と比較することにより、磁気乱流の定量的評価を行いたいと考えている。この目的のために、すばる望遠鏡のSEEDsプロジェクトで得られたHerbig Ae星であるHD169142の偏光撮像観測結果を解析した。HD169142の周りにある原始惑星系円盤では、半径60AU付近を境に内側の円盤のほうが偏光像で暗いことがわかった。これは、内側の円盤のガス密度もしくは温度が下がっていることを示唆している。我々の理論計算では円盤内側に磁束がたまると、内側部分のガス密度が下がることを示している。つまり、HD169142では、円盤を貫く磁束が中心星付近に集中している可能性があることを明らかにした。
27年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2015
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 4件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (7件)
The Astrophysical Journal Letters
巻: 806 ページ: L15 (6pp)
10.1088/2041-8205/806/1/L15
Publications of the Astronomical Society of Japan
巻: 67 ページ: id. 83 (16pp)
10.1093/pasj/psv051
巻: in press ページ: in press
The Astrophysical Journal