研究実績の概要 |
平成 26 年度では, 平成 24--25 年度において構築した回転球殻非弾性系ガス惑星大気モデルを用いて, 非同期回転ガス惑星の大気循環の多様性を調べる数値実験を遂行する予定であった. そのためにわれわれは, まず参照例となるべき研究として, 非同期回転ガス惑星の Heimpel and Aurnou (2007) の数値計算を再検討した. かれらは木星および土星で観察される赤道域の幅広な広い赤道加速ジェット流と中高緯度にて交互に流れの向きを変える縞状ジェット構造を「薄い回転球殻熱対流モデル」で世界最初に同時に再現したとされていた. しかしながら, かれらの計算設定は全球ではなく経度方向に 8 回対称性を仮定したものであり, さらに計算時間が十分とはいえなかった. そこでわれわれは, Heimpel and Aurnou (2007) と同じ計算設定および解像度を保ちつつ全球へと拡張し, さらに長時間積分を実行した. その結果, 時間積分の中途段階において, 木星・土星に見られるような赤道ジェットと中高緯度の縞状構造が同時に出現し, Heimel and Aurnou (2007) と整合的な結果が一見得られたようにみえた. しかしながら, さらに時間積分を進めると, 中高緯度が全体に西風加速され縞状構造が消滅していき, 最終的に南北中高緯度に幅広の帯状流がそれぞれ 1 本づつとなった. この結果から, Heimpel and Aurnou (2007) の解は過渡的なものであり, 木星および土星の表層流を再現するモデルとしてはふさわしくないものであることが明らかになった. 長時間積分で中高緯度の縞状構造が消滅したことは, 木星・土星の帯状流が惑星深部の対流運動により直接的に生成されてはいないことを示唆するのかもしれない.
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