研究領域 | 太陽系外惑星の新機軸:地球型惑星へ |
研究課題/領域番号 |
26103707
|
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
町田 正博 九州大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (10402786)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 惑星形成 / 磁気流体シミュレーション / 星形成 / 原始惑星系円盤 / 系外惑星 / ガス惑星 / 原始星ジェット / アウトフロー |
研究実績の概要 |
重力不安定による惑星形成過程を調べるために多層格子法による大規模シミュレーションを行った。初期条件として観測されているような星が誕生する前の分子雲コアを採用し、その進化、収縮の過程を計算した。今までの計算では、中心星の内部までを解像するために長時間推進が出来ない、または高密度領域をシンクセルという手法によってマスクしてしまうために中心星近傍の星周円盤形成領域が分解できない、などの問題があった。この計算では、独自に原始星のモデルを作成し原始星を空間解像しつつ長時間の時間推進を可能にした。その結果、円盤の形成過程と原始星からのジェット、また星周円盤からのアウトフローといった空間的に大きく異なる現象を再現することが出来た。原始星形成前にファーストコアという一時的な天体が形成する。ファーストコア内部は高密度のために電離度が極端に低下して磁場の散逸が起こる。そのため、ファーストコア内部では磁気制動の効果が弱まり回転円盤が形成する。この円盤は遠心力で支えられているために時間と共に面密度を上昇させて最終的には重力不安定が起こる。重力不安定によって形成した渦状腕によって角運動量輸送が起こるが、この過程は非定常であるため、中心星への質量降着率も非定常になる。そのため、中心星から駆動するジェットも非定常となる。これらは観測をよく説明する。この研究によって星形成の初期段階、円盤の形成段階を解明することが出来た。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の計画通り数値シミュレーションを行い、その結果を解析して論文として出版することが出来た。この研究では原始星形成後どの位の期間時間積分が出来るかが重要であるが、スーパーコンピュータを用いて原始星形成後500年間計算することが出来た。これは、ほぼ1年間スーパーコンピュータで計算し続けた結果である。しかし、さらに惑星の形成段階を調べるためには、この10倍以上の時間積分を行う必要がある。現状のコードで10倍の時間を計算するのは現実的ではないため、今後数値コードの高速化を目指す。また、この研究では、ALMAなどの観測と比較できる時期、空間スケールまで計算することが出来た。今後、観測とシミュレーション結果を比較することによりより星形成、惑星形成の理解が進むと思われる。
|
今後の研究の推進方策 |
今回の研究では、1パラメータの計算を行ったのみである。今回採用した、分子雲コアは、もっとも典型的な磁場強度と回転の度合いを持つが、観測から磁場強度と回転の度合いにはばらつきがあることが分かっている。そのため、今回の計算で示した例が一般的であるかどうか分からない。今後の研究では、分子雲コアの磁場強度と回転の度合いをパラメータとして今回と同様の計算を行い、普遍的な星・星周円盤の形成過程を調べる。また、今回の研究では、磁場の散逸過程としてオーム散逸のみを考えた、しかし、誘導方程式に含まれる他の項、つまり、ambipolar diffusionやホール項も重要である可能性がある。今後これらの効果を計算に実装しつつ、さらに計算コードの高速をし星形成過程の計算を行う予定である。
|