研究実績の概要 |
研究目的は、柔らかい分子の代表であるタンパク質の揺らぎを含む運動を、理論と実験から調べることであった。これまでATP合成酵素の1部である回転タンパク質モーターF1-ATPaseで、非平衡統計力学の揺らぎの理論から回転トルクを測定することに成功してきた。本研究では、神経細胞軸索内でオルガネラ(細胞小器官)がタンパク質モーターに輸送される現象を対象にし、揺らぎの定理を実験に応用することを目指した(実験1)。理論の検証のための基礎実験の他に、神経細胞軸索輸送と類似した応用実験として、美容・医療分野と関連の深いメラニン色素の輸送を研究する計画(実験2)であった。 平成26年度は実験(1)に関して、キネシンのin vitro1分子実験で細胞環境に類似した高粘性下で、キネシンの個数を制御した実験を行うことを目指した。高粘性下の実験は先行研究 [Gagliano et al., Eur. Biophys. J (2010)]、モーター数を制御した実験は先行研究[Furuta et al., PNAS (2012)]を参考にして行った。実験(2)に関して、輸送に関連するモーターが同定されている魚類の色素細胞の培養を行い、メラノソームの運動を観察した。メラノソームの運動が高速カメラを用い、重心運動を高分解能に解析できるようになった。また、LabVIEWを用いたソフトを作成し、タイムコースの解析が容易になった。
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