公募研究
本繰り越し課題では、プロリン型の非天然アミノ酸である二環性β-プロリンの構造特性を明らかにする研究の過程で、側鎖によるアミド結合の非平面化の構造変化を検出することに成功した。このアミノ酸は二環性骨格のひずみのため、アミド窒素が通常の平面構造を取れずにピラミッド化した構造をとる。橋頭位側鎖として水素結合性のヒドロキシメチル基を持つ短鎖ペプチドと、非水素結合性のメトキシメチル基を持つ短鎖ペプチドの構造をX線結晶構造解析により調べたところ、両者とも大きく窒素ピラミッド化しており、さらに、アミドの非平面化(傾き)の方向が反転していることを見出した。窒素ピラミッド構造には窒素の反転により2種類の異性体が考えられ、両者は速い平衡関係にあるため、構造解析が困難である。そこで、今回はNMRおよび赤外円二色性(VCD)スペクトルの手法を用いて溶液構造について検討を行った。まず、水素結合性短鎖ペプチドは溶液中で側鎖と近傍のアミドカルボニル基の間で水素結合を形成していることを明らかにした。また、水素結合の有無で窒素ピラミッド化の安定な方向が変化することをVCDにより示すことに成功した(VCDは、北海道大学門出健次先生、谷口透先生との共同研究である。)本繰り越し課題では、本研究の論文化に注力し、類縁化合物の合成やスペクトル解析、分子軌道計算による裏付けなどを行った(Wang, S.; Taniguchi, T. et al., Chemical Communications, 52, 4018-4021 (2016))。
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 3件) 学会発表 (20件) (うち招待講演 1件) 備考 (1件)
Chemical Communications
巻: 52 ページ: 4018-4021
10.1039/C6CC00284F
Organic & Biomolecular Chemistry
巻: 14 ページ: 1680-1693
10.1039/C5OB02240A
Journal of Medicinal Chemistry
巻: 58 ページ: 4204-4219
10.1021/jm5020082
http://www.f.u-tokyo.ac.jp/~yakka/index.html