研究実績の概要 |
本研究の目的は,螺旋状のねじれた構造をもつπ共役分子「ヘリセン」をモジュールとして,その規則的な集積化によって高次構造を構築し,単分子では不可能な革新機能を示す柔らかい分子系を創製することである. (1)新規ヘリセンの合成:ヘリセン骨格に導入するヘテロ元素の種類・数が構造や物性に及ぼす効果についての知見を得るために,チオフェン環二つ,ヘテロール環一つ,ベンゼン環四つが縮環したトリへテロ[7]ヘリセンの合成を目指し,共通の出発原料となる1,1'-ビナフト[2,1-b]チオフェンの合成に成功した.さらに,チオフェン環二つの2位のリチオ化とジクロロシランとの反応により,収率は低いものの,新規ジチアシラ[7]ヘリセンの合成に成功した.また,ピロール環二つ,フラン環一つ,ベンゼン環四つが縮環したジアザオキサ[7]ヘリセンの合成にも成功した.さらに,ヘリセンのキロプティカル特性を付与した高発光性材料の創製に向けて,アザ[7]ヘリセンをドナー部位とする光学活性ドナー・アクセプター型分子を設計した.種々の条件検討の結果,シアノ基二つとアザ[7]ヘリセン二つが一つのベンゼン環に置換した新規光学活性ドナー・アクセプター型分子の合成に成功し,高い蛍光量子収率を達成した. (2)ヘリセンの高次集積化:螺旋構造を形成することが知られている高分子の側鎖にヘリセンを導入することで,主鎖に沿ってヘリセンが螺旋状に配列されたヘリセン集積体の構築と機能発現について検討した.まず,主鎖の螺旋高分子としてヘリカルポリアセチレン,ヘリセンとしてアザ[7]ヘリセンを選定し,重合部位となるエチニル基を導入した新規アザ[7]ヘリセンの合成に成功した.ロジウム触媒をもちいて得られたモノマー(ラセミ体)の重合をおこない,ヘリセンを側鎖に導入したヘリカルポリアセチレンの合成に成功した.
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