公募研究
我々はGGAGGAGGAGGAという配列からなるRNA(以下R12)が、プリオンタンパク質(狂牛病等の原因タンパク質)を高い親和性で捕捉するRNAアプタマー(特定の分子に対して高い親和性を示すRNA分子のこと)として機能する事を見出した。一方R12は、カリウムイオンに依存したその大きな構造変化により、酵素活性のスイッチング素子としても機能する事も見出した。R12が状況に応じて柔軟に変化して全く異なる二つの機能を発揮するメカニズムの解明と、その応用を目指した。R12とプリオンタンパク質の複合体の構造解析をNMR法によって行った。その結果、R12がプリオンタンパク質に対して高い親和性を示すのは、2量化してプリオンタンパク質と2箇所で同時に結合する為である事が解明された。またR12は正常型プリオンタンパク質に結合してこれを安定化し、同タンパク質の異常型への遷移を抑制する事で抗プリオン活性を示す事が、生細胞を用いたアッセイによって示された。R12は生理的濃度のカリウムイオンの有無によって、立体構造が大きく変化する事が分かった。核酸酵素を二つのサブユニットに分断し、これをR12の両端に結合させると、カリウムイオンの有無によってサブユニットの配置が大きく変化する。この事を応用して、カリウムイオンの有無によって活性がスイッチングする核酸酵素を創製する事に成功した。第一世代においては、活性の増強は4倍程度であった。核酸酵素に対する相補鎖を導入して、カリウムイオンが存在しない時の活性をしっかりと抑制した第二世代においては、活性の増強を大幅に増大し、30倍程度にする事に成功した。抗HIV活性を有する酵素の反応をリアルタイムNMR法によって解析する方法論を開発し、DNA上のスライディングとカップルした動作機序を解明する事に成功した。
2: おおむね順調に進展している
R12がRNAアプタマーとして機能するメカニズム及びR12が酵素活性のスイッチング素子として機能するメカニズムを解明する事に成功した。
酵素活性のスイッチングに成功したので、今後はアプタマー活性をスイッチングする事をにチャレンジする。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 2件) 備考 (1件)
Chem. Commun.
巻: 51 ページ: 5898-5901
10.1039/c5cc00961h.
生物物理
巻: -
Angew. Chem. Int. Ed.
巻: 53 ページ: 2349-2352
10.1002/anie.201309940
http://www.iae.kyoto-u.ac.jp/bio/