研究領域 | 理論と実験の協奏による柔らかな分子系の機能の科学 |
研究課題/領域番号 |
26104526
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
吉田 紀生 九州大学, 高等研究院, 准教授 (10390650)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 理論化学 / 化学物理 / 統計力学 |
研究実績の概要 |
チャネルロドプシンは,緑藻類から単離された光駆動陽イオンチャネルであり,青色光の吸収により陽イオン(とくにNa+)の輸送活性を示すことが知られている。このタンパク質はオプトジェネティクスの有用なツールとして着目を浴び,すでに利用が進みつつある。にもかかわらず,イオン輸送経路や開閉のメカニズムなど,まだ未知の部分が多く残されている。 本研究課題では,液体の統計力学理論(3D-RISM)と分子シミュレーションを用いて,(1)チャネルの閉構造および初期開構造におけるイオン輸送経路の解明,(2)チャネルの遅い構造変化とイオン輸送経路の統計力学的探索を行い,チャネルタンパク質構造の柔らかさとイオン分布の柔らかさの相関を分子論的に明らかにすることを目的とする。 上記のような目的のもと,これまでに,(1) 分子シミュレーションによりチャネルロドプシンの閉構造および初期開構造を求め,得られた構造に対して3D-RISM計算を行い,チャネル内の水分子分布およびイオン分布を評価し,チャネル経路を明らかにしつつある。(A01林グループとの共同研究)(2) ABCトランスポーターの二量体形成過程におけるATPおよび水の役割を分子シミュレーションおよび3D-RISMにより明らかにした。(A01櫻井グループとの共同研究)(3) 分子認識過程におけるタンパク質-リガンド間相互作用の高精度解析を目指し,フラグメント分子軌道法と3D-RISMの連成計算手法を開発した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定していた閉構造および開構造のイオン分布を評価を行い,開構造におけるイオン透過のメカニズムを明らかにしつつある。この中で,輸送経路に沿ったイオンの自由エネルギープロファイルから透過能についても知見を得ることができた。 また,領域内共同研究をすすめ,そのうち一件では論文の発表を行うなど領域内の共同研究推進にも寄与した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は,開構造におけるイオン透過メカニズムの解析を一層進め,チャネル輸送の分子論を明らかにする。また,イオン種による輸送能の違いを検討する。 タンパク質内の物質輸送経路探索の新しい手法の提案を行い,チャネルロドプシンへ応用する。この手法では3D-RISMで求めたイオンの平均場ポテンシャル面をもとに,ストリング法を用いて準安定点間のイオン移動経路を求める。この手法によりこれまでは難しかった経路上のバリアを評価することが可能となる。 領域内共同研究として,これまでの共同研究に加え,A01苙口グループ,A02関谷グループ,A02飯野グループ,A03神取グループとの共同研究を推進する。
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