研究領域 | 理論と実験の協奏による柔らかな分子系の機能の科学 |
研究課題/領域番号 |
26104539
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研究機関 | 分子科学研究所 |
研究代表者 |
水瀬 賢太 分子科学研究所, 光分子科学研究領域, 助教 (70613157)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | フェムト秒化学 / クラスター化学 / 画像観測 / 分子間相互作用 / 分子ダイナミクス / 装置開発 |
研究実績の概要 |
分子集団の構造(集合形態)変化を誘起するため、構造変化に直結する分子間振動の励起実験を開始した。比較的弱いファンデルワールス力で集合しているベンゼン多量体やベンゼン‐希ガスクラスターに対してフェムト秒レーザーを集光し、インパルシブ誘導ラマンの過程によって低振動のモードがコヒーレントに励起されることを見出した。構造変化を誘起するためには、多段階の振動励起が必要となる。そこで、2nパルス列を生成させるための多段階干渉計を構築中である。また、上記の予備実験によって励起された振動モードの帰属や、多量体の安定構造の決定、構造変化(異性化)にいたるポテンシャルエネルギー曲面の考察のため、A01 解析班の協力関係を構築した。 分子ダイナミクスを画像観測の手法によって、直接的、視覚的に理解することを目的として、新規イメージング装置の設計・開発を行った。フェムト秒のイメージング用パルス照射によって分子系から放出されるイオン・光電子の放出角度分布を2次元検出器で計測するものだが、既存の2次元計測では、系に軸対称性がない場合の分布算出が不可能であった。本研究では、そのような困難を取り除くため、まったく独自の着想に基づく,断層画像化法を組み込んだイメージング装置を開発した。 前項で開発した装置を、一方向に回転する2原子分子系に適用することで、量子力学に支配される分子の回転を初めて可視化することに成功した。今後は分子モーター系といった、運動が機能と結びついている分子系において、ダイナミクスの直接観測による機能評価・理解へと展開する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は2年計画であり、その期間の多くを費やす予定だった画像観測装置の設計開発について、想定よりもスムーズに進んでいる。所属機関の変更に伴う実験設備の停止期間があったが、その期間を装置設計に回すことで効率的な研究が進んでいると判断する。一方、分子クラスターの光制御については実験系の再セットアップに遅れが見られるため、総合的には、おおむね順調と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
分子クラスター実験系の再セットアップをするにあたり、効率的な生成方法の開発を行う。すでに予備デザインはおこなったため、27年度予算にて整備をすすめる。クラスター実験開始後、更なる発展として、偏光制御光学系を組み込み、分子制御の選択性を高めることを計画している。
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