公募研究
本年度は実験のフェーズ1の位置づけであり、まず、実験装置の準備を行った。年度初めは各部品や検出器を製作した。測定系を組み上げて、動作とバックグラウンドを確認するため、6月にSPring-8のBL19LXUビームラインで試験測定を行った。3日間のビームタイムで、X線衝突系、検出器系ともに問題なく動作し、バックグラウンドも想定通りであった。そのセットアップをほぼそのまま使用して、SACLAで光子・光子散乱を探索した。測定は11月3日から6日にかけてSACLA BL3、EH4で行った。装置を約1日かけて調整し、ほぼ2日間データを取得した。その結果、光子・光子散乱のシグナルとして予想されるエネルギー領域にはイベントが見つからなかった。フォトダイオードで測定したX線光子数と、ワイヤースキャンから求めたビームサイズを考慮して、今回の測定で得られた光子・光子散乱に対する上限値は3.7×10^-25m^2(信頼レベル95%)となった。これは、以前のわれわれの測定と比較すると約4倍厳しい制限である。ただし、かつて可視光領域で行われた実験と比較すると、QEDの予言する断面積に対する制限としては弱い。この原因の一つは、SACLAのビームが調子が悪く、線幅、光子数ともに期待するほどの性能ではなかったことがある。これらの結果の詳細については、現在解析中で、論文として公開する準備をしている。また、更なる感度向上のためにX線衝突系の改良を進めている。
2: おおむね順調に進展している
当初予定していた通り、実験装置の準備が完了し、第一回目の測定を行う事ができた。また、今後の感度向上のための課題の洗い出しができ、改良の方針を決定できた。
光子・光子散乱の探索感度を向上させ、次の測定を行う。感度向上のためには、まず、SACLAの改良(SEED化)によるX線の単色性の向上が期待できる。また、現在、X線の衝突のためにはラウエ回折を利用しているために大幅なX線のロスがあるが、これをブラッグ回折の利用に変更し、そのための結晶を作成することでも感度向上を行う。これらにより、SACLAで世界最高感度での光子・光子散乱探索実験を行う。
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Physics Letters B
巻: 732 ページ: 356-359
doi:10.1016/j.physletb.2014.03.054
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