研究領域 | 先端加速器LHCが切り拓くテラスケールの素粒子物理学~真空と時空への新たな挑戦 |
研究課題/領域番号 |
26104702
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
柿崎 充 富山大学, 大学院理工学研究部(理学), 助教 (90612622)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 素粒子論 / テラスケール / 余剰次元 / 超対称性 / 暗黒物質 / ヒッグス粒子 / 大統一理論 |
研究実績の概要 |
2012年に欧州の加速器LHCで万物の質量の源となるヒッグス粒子が発見され、素粒子物理学の標準理論はテラスケール以下のエネルギースケールの現象を矛盾なく記述する理論として確立した。しかしながら、ニュートリノ振動、暗黒物質の存在、宇宙のバリオン数非対称などは標準理論で説明できないことが知られている。これらの現象論的問題や理論的諸問題の解決策としてテラスケールで実現されている余剰次元に基づく模型が多数提案されている。これらの模型の予言を調べ、テラスケール余剰次元の実現可能性に迫るのが本研究の目的である。 本年度は、拡張されたユニバーサル余剰次元模型においてカルツァ・クライン粒子の質量スペクトルが暗黒物質の残存量に与える影響について調べた。残存量を説明できる暗黒物質候補粒子の質量は最小構成のユニバーサル余剰次元模型の場合のそれと大きく異なり得ることを示した。 また、申請者はXボソンを余剰次元方向に局在化させることで陽子崩壊実験の結果と矛盾せずに、テラスケールで大統一理論が実現できる余剰次元模型を提唱したが、本年度はこの理論の超対称化にも取り組んだ。 さらに、超対称標準模型に右巻きニュートリノ超場を導入した模型において、ヒッグス粒子の不可視崩壊、及び真空安定性等の現象論的制限と矛盾せずに、ギガ電子ボルトの質量を持つ混合スニュートリノが暗黒物質の残存量を説明可能なパラメータ領域があることを示した。このようなシナリオはテラスケール余剰次元を導入することで説明できる可能性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
拡張されたユニバーサル余剰次元理論で様々な物理量を計算できる数値計算コードを作成し、現在進行中、及び将来の素粒子実験、宇宙観測の結果と照らし合わせることが可能になった。その中で特に暗黒物質の残存量の計算結果に関して学会で発表した。それに加えて、テラスケール余剰次元の枠内で説明できる可能性のある、軽い混合スニュートリノが暗黒物質となる超対称模型が将来の国際リニアコライダーでのヒッグス粒子の性質の精密測定により検証可能であることが指摘できた。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度にはエネルギー、ルミノシティーを増強して再開したLHC実験の結果の報告が期待される。これにより得られる新しい物理模型の兆候、もしくは制限に関するデータを用い、テラスケール余剰次元模型の解析を遂行する。また、今後の暗黒物質の直接・間接実験や将来の国際リニアコライダー等を用いて多角的な観点からどのように模型の兆候が得られるのか、また区別できるのかを明らかにしていく。さらに、新しいテラスケール余剰次元模型の構築や、得られる予言の現象論的解析を行う。
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