研究領域 | 先端加速器LHCが切り拓くテラスケールの素粒子物理学~真空と時空への新たな挑戦 |
研究課題/領域番号 |
26104708
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
早田 次郎 神戸大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (00222076)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | アキシオン / 重力波 / カイラル |
研究実績の概要 |
ヒッグス粒子が発見され、標準模型の正しさが証明されるとともに、ニュートリノの質量や暗黒物質など、標準模型では説明できない現象がクローズアップされており、ミクロの物理への新しいアプローチが必要とされている。一方で、インフレーションシナリオの正しさが、宇宙背景放射の観測によってほぼ決定的となった。インフレーションを、ミクロの物理を研究するための道具として積極的に使うことができるようになったのである。これは、インフレーション中に生成された揺らぎ、特に原始重力波、が高エネルギー宇宙の情報をもたらすからである。本研究の目的は、原始重力波を使ったアキシオンセクターの物理の研究であり、それを通して新たな時空像に迫ることにある。アーベルゲージ場の場合の重力波生成の研究は他のグループによってかなり詳細に研究されてしまったので、今年度は非アーベルゲージ場がアシストするようなインフレーションモデルの研究を行った。このモデルはタキオン不安定性を示すことが知られていて、宇宙背景放射の観測に矛盾してしまう。我々は、マルチバース時空描像の立場から、複数のアキシオン場を導入し、観測と整合的なモデルの構築に成功した。その結果、パルサータイミングによって観測可能な振幅をもった原始重力波が生成されることを明らかにした。これは将来の重力波観測に大きな影響を与える成果である。これはまた、パリティーの破れた時空描像を示唆しており、新たな時空描像を描き出したことにもなる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
マルチバース宇宙描像によるカイラルな重力波生成を明らかにしたことで、パリティーの破れた時空描像を描き出すことに成功した。
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今後の研究の推進方策 |
この研究テーマは世界的な競争が激しく、今回は重力波に特化して成果を出すことを重視したため、曲率揺らぎなどを取り入れた総合的なモデルの検討を行っていなかった。今後は、観測との整合性の検討を含めた、より詳細な解析を行い、新たな時空描像を確立したい。
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