素粒子標準模型の抱えるニュートリノ質量、宇宙暗黒物質、および宇宙バリオン数の問題を同時に解決する可能性として、新しい素粒子、「電弱スケールよりも軽い右巻きニュートリノ」に着目した。特に、この粒子の実験による検証可能性について検討を行った。
今年度は科研費のサポートを受け研究が進展し、合計6編の論文を発表した。内訳は、査読付き論文に発表済みが3編、論文に投稿中が2編、会議紀要が1編が1編である。また研究成果は、国内外の研究会で多数発表してきた。特に、国際会議2回を含む計4回、招待講演を行った。
注目すべき研究成果としては、J-Parc加速器にて計画されているCOMET実験において軽い右巻きニュートリノを探索する手法を提案した。COMET実験は、大強度ミューオンを用いてレプトンフレーバーを変えるミューオン電子転換過程を探索する実験である。本研究では、この実験装置をそのまま用い、質量が1MeVから100MeVの右巻きニュートリノを探索する方法を提示した。この領域であるとCOMET実験において大量に生成するミュー粒子の崩壊から右巻きニュートリノが生成可能である。さらに、1MeVよりも重いと右巻きニュートリノはニュートリノと電子対へ崩壊する。この電子対の発生をシグナルとした。我々の解析から、COMET実験での右巻きニュートリノの感度は、CERNでのPS191実験が制限した領域と同程度であり、これまで未探索の領域まで達することが判明した。
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