研究領域 | ニュートリノフロンティアの融合と進化 |
研究課題/領域番号 |
26105512
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
吉田 斉 大阪大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (60400230)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 低バックグラウンド実験 / 陽イオン交換樹脂 / カルシウム同位体 / 放射化 / ゲルマニウム検出器 |
研究実績の概要 |
本研究は、48Caのニュートリノレス二重ベータ(以下、0νββ)崩壊の研究を進めるうえで重要となる、精密なバックグラウンド評価を行うため、48Caのβ崩壊の崩壊率を測定する事を目的としている。 小規模の実験装置を製作し、β崩壊によって生成された48Scの捕集について原理検証試験を行った。【イオン交換樹脂におけるSc3+の捕獲原理の確認】Ca2+水溶液を、陽イオン交換樹脂を封入したカラムに通し、予め吸着させ、その後Sc3+を含む水溶液をカラムに通し、カラム前後での水溶液中のSc量を測定することで、陽イオン交換樹脂中のCa2+がSc3+に置換される事を確認し、炎光分析器を使用して捕集効率を測定した。【高濃度Ca溶液中でのScイオン捕集の原理検証】大量のCa原料内に数個のScが生成され、それを捕集する必要があるため、原理検証を行う際のSc濃度は、炎光分析器の分析感度から100ppm程度に濃くする必要があり、大量のCa中での数個のSc捕集についての原理検証になっていないとの懸念がある。その為、45Sc(自然存在比100%)を加速器標的近くで放射化し46Scを含む溶液を作成し、46Sc-->46Tiの崩壊(半減期84日)を検出することで原理検証を行った。【イオン交換樹脂等の材料によるバックグラウンドの評価】イオン交換樹脂、封入用カラムや一部配管がGe半導体検出器の正面に置かれ、吸着された48Scの崩壊γ線(Eγ = 939keV, 1038keV, 1312keV)を検出する。樹脂やカラムの材料をGe検出器で長期間測定し、当該エネルギーのバックグラウンド計数率を評価した。Ge検出器によるγ線の検出効率をモンテカルロシミュレーションにより評価した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画していた実験項目は、すべて実行できた研究当初の結果は期待通りの結果であったが、陽イオン交換樹脂Ca2+イオン吸着量が期待よりも少なく、予定よりも大容積の樹脂を必要とすることが分かった。対策の結果流量の低下と樹脂量の増強で回復ができ、測定要件をクリアできることに見通しがついたため、次年度以降は大型化の実現を進め、測定を実施できる見通しができた。
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今後の研究の推進方策 |
①大型装置の設計 前年度の検証・評価を基に、48Caのβ崩壊半減期に対して、1.0×1021年以上の測定感度を持つ装置を設計する。Ca原料タンク容積、Ca原料水溶液濃度、原料液の循環流量、イオン交換樹脂とカラムの容積、カラムの形状と配置、遮蔽構造体の一部改造(配管を通すため)について最適な設計を行う。 ②大型装置の製作 詳細設計をもとに、測定装置を製作する。稀な事象を測定するため長時間の装置運転と測定が必要であるため、安全面について対策をする。連続的に運転されるポンプは、出口側での閉塞による圧力異常が懸念されるため一定圧力で解放され原料タンクに繋がる安全弁を導入する。また、配管等での原料液の漏洩を素早く検知できるよう、原料タンクに液位監視装置を設置し、異常時にポンプを停止させる機能を導入する。 ③大量のCa試料を使用した48Caのβ崩壊の半減期測定 目標感度で半減期を測定するため、100日程度の測定を行う。長期間の測定でGe検出器の安定性が系統誤差になるため、測定期間中のGe検出器のエネルギー較正が重要であり、511keV(宇宙線Vetoとの同期事象)と1464keV(自然界の40K)を使用して測定を行いながら安定性を確認する。
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