研究領域 | 有機分子触媒による未来型分子変換 |
研究課題/領域番号 |
26105701
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研究機関 | 旭川工業高等専門学校 |
研究代表者 |
吉田 雅紀 旭川工業高等専門学校, 一般理数科, 准教授 (30322829)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 有機分子触媒 / 不斉合成 / アミノ酸 |
研究実績の概要 |
ポリエーテル鎖によるリチウムカチオンの取り込みを鍵とする不斉有機分子触媒を創製することを目標として研究を進めた。平成26年度にはL-アスパラギン酸から合成した第一級β-アミノ酸であるβ-ホモセリンのヒドロキシ基を足掛かりに、ポリエーテル鎖の導入を試みた。まず、L-アスパラギン酸の4位カルボキシ基をベンジル基、アミノ基をCbz基で保護した後、1位カルボキシ基を還元してヒドロキシ基とし、β-ホモセリン保護体を合成した。次に、ヒドロキシ基からより脱離能の高いp-トルエンスルホン酸エステルへの変換を試みたところ、β-ホモセリン保護体をピリジン溶媒中で塩化トシルと反応させた場合に収率よく目的生成物が得られることが分かった。続いて、得られたスルホン酸エステルの2-メトキシエタノールによる求核置換反応を試みた。はじめに水素化ナトリウムで処理した2-メトキシエタノールを用いてスルホン酸エステルと反応させたところ、反応基質は速やかに消費されたが多種の生成物が得られ、反応混合物のNMR解析では目的生成物を確認することはできなかった。求核種であるナトリウムアルコキシドの反応性が高いことが複雑な反応混合物を与えた原因ではないかと考え、スルホン酸エステルと2-メトキシエタノールの混合物に塩基としてトリエチルアミンを加え、温和な条件で置換反応を試みたが、反応は全く進行しないことが分かった。この他、スルホン酸エステルの2-メトキシエタノールによる置換反応の反応条件を種々検討したが、現在のところ目的生成物を得るには至っていない。しかしながら、アミノ酸保護体の官能基変換に関する情報など、目的とする不斉有機分子触媒を合成するための重要な知見を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成26年度には、第一級β-およびα-アミノ酸からそれぞれポリエーテル鎖を有する有機分子触媒を合成することを計画していた。具体的には、まず、L-アスパラギン酸の4位カルボキシ基をベンジル基、アミノ基をCbz基で保護した後、1位カルボキシ基を還元することでヒドロキシ基とし、第一級β-アミノ酸であるβ-ホモセリンの保護体を得る。続いて、ヒドロキシ基からスルホン酸エステルとして2-メトキシエタノールによる求核置換反応を行いポリエーテル鎖を導入した後、4位カルボキシ基およびアミノ基の脱保護により、目的の不斉有機分子触媒を合成する計画であった。現在のところ、スルホン酸エステルまでは良好に得ているものの、2-メトキシエタノールの求核置換反応によるポリエーテル鎖の構築までは達成できていない状況である。 以上のように、目的の不斉有機分子触媒の合成は終盤に差し掛かっており、研究は計画通りに進んでいないものの大幅な遅れではないため、このような評価とした。
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今後の研究の推進方策 |
第一級α-アミノ酸からポリエーテル鎖を有する有機分子触媒を得る合成経路は、基盤となるアミノ酸(L-セリン)が容易に入手可能であること、L-セリンのヒドロキシ基からエーテル結合を作る方法がすでに知られていることから、第一級β-アミノ酸にポリエーテル鎖を導入するよりも比較的容易であると予想している。平成27年度はまず、第一級α-アミノ酸からポリエーテル鎖を有する有機分子触媒の合成を試みる。触媒を合成した後、当初の計画通りに、①マロン酸エステルの2-シクロヘキセノンへの不斉マイケル付加反応をモデル反応とした触媒性能の評価、②ポリエーテル鎖の有無による不斉触媒反応への影響の調査、③既知法では不斉マイケル付加反応の基質として不活性であった2-メチル-2-シクロヘキセノンを用いた反応、にも可能な限り取り組んでいく。また、第一級β-アミノ酸にポリエーテル鎖を導入する方法についても、脱離基や保護基の変更により検討していく。
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