研究領域 | 有機分子触媒による未来型分子変換 |
研究課題/領域番号 |
26105702
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
小笠原 正道 北海道大学, 触媒化学研究センター, 准教授 (70301231)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 面不斉 / 有機分子触媒 / フェロセン / ピリジン / 不斉合成 / ライブラリー |
研究実績の概要 |
一般に、不斉反応において高いエナンチオ選択性を得るためには「効果的なキラル・テンプレート」の設計が重要である。従来の不斉有機分子触媒において利用されている不斉源は、軸不斉ビアリール類を除けばほとんどが天然物由来であり、不斉触媒設計のバリエーションが限られているのが現状である。このような背景のもと、本研究では「新規な不斉有機分子触媒の設計と合成」および「既存の合成困難な触媒種の効率的合成法の開発」により、新規不斉場を有する不斉有機分子触媒ライブラリーの構築を目指している。 平成26年度の研究では、「面不斉ピリジン求核性有機分子触媒」のエナンチオ選択的合成法の開発を達成した。フェロセンが縮環した面不斉ジアルキルアミノピリジン類は1990年代にG. C. Fuらによって開発された化合物であるが、その合成法は煩雑であり、またラセミ体として得られた化合物を光学分割する必用があるため、多くの誘導体を含むライブラリー合成は検討されていなかった。今回我々は、面不斉フェロセン類の不斉合成の関する知見を基に、「フェロセン縮環面不斉4-ピリドン類のエナンチオ選択的合成法」の開発に成功した。ここで得られた4-ピリドン類は、種々の適当なアミン求核剤と反応することにより、対応するジアルキルアミノピリジン類へと簡便に変換できる。我々が開発した手法により、8種の新規化合物を含む「フェロセン縮環面不斉ジアルキルアミノピリジン類のライブラリー」が得られた。これらのライブラリーをラセミ体二級アルコールの速度論分割エステル化に応用したところ、本研究で新たに得られたジエチルアミノ誘導体が既知の化合物を凌駕する最も高いエナンチオ選択性を有することを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上記の「フェロセン縮環面不斉4-ピリドン類のエナンチオ選択的合成法の開発」は、当初から計画していた反応であり、初年度の研究成果としては順調に発展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、「フェロセン縮環面不斉4-ピリドン類のエナンチオ選択的合成法」の更なる改良を目指す。具体的には、メタセシス反応を閉環段階に用いない手法を開発することにより、合成の簡便化/短段階化を目ざし、より実用的な合成法へと発展させる。また、この改良により、より多様な置換基の導入が可能となることが期待できることから、さらなる多様なライブラリー合成、およびより高性能な不斉有機分子触媒の開発を検討する。
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