先に我々は、ベンジルオキシベンゾフェノン誘導体およびアセトフェノン誘導体のNorrish - Yang反応において、テトラアルキルアンモニウム塩を添加すると、基質とのカチオン-π相互作用によりcis選択的にテトラヒドロベンゾフラノールが生成することを見出しいる。今年度は、増感効果を示す触媒を開発することで触媒量の低減を検討した。 基質として、2-シアノメチルオキシアセトフェノンを用いて、種々の増感剤を検討したところ、4-メトキシアセトフェノンが増感効果を示すことが明らかとなった。一方、テトラブチルアンモニウムアセテートもカチオン-π相互作用により反応を促進することが明らかになった。これらの結果から、両者を結合させたテトラアルキルアンモニウム増感触媒を合成し、光反応の経時変化を調べた結果、30 mol%でも著しい加速効果が見られ、目的とする光増感型アンモニウム触媒を開発することができた。 さらに、触媒的[2+2]光付加環化反応についても検討を行った。先に我々はスチリルピリジンの光二量化反応において、立体選択的[2+2]光付加環化反応が進行することを明らかにしているが、本研究では、カチオン―π相互作用による配向制御の一般性を明らかにすることを目的とし、ピリジン以外の含窒素複素環化合物であるスチリルチアゾール類の光二量化反応を検討した。 いずれの基質においても塩酸の非存在下では4種の二量体が得られ、選択性は見られなかった。一方、塩酸存在下では高い選択性でsynHT体が主生成物として得られた。これらの結果から、酸の添加により、チアゾール環がプロトン化されて正電荷を持つことで、分子間カチオン-π相互作用が働きsynHT体が優先して生成したものと考えられる。以上のことから、カチオン-π相互作用による分子間の配向制御が一般的手法として利用できることを明らかにした。
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