研究実績の概要 |
昨年度見出した1,2-ジオールからα-ヒドロキシカルボン酸への化学選択的酸化反応の機構解析から,電荷移動錯体TEMPO-ClO2が化学選択性発現に重要な役割を果たしていることが明らかとなった.そこで,有機ニトロキシラジカルと種々の酸化剤を混合し,紫外可視吸収スペクトルによって分析したところ,電子不足なキノン類と電荷移動錯体を形成することが新たに示唆された.また,アリルアルコールに対するシャープレス不斉エポキシ化反応とエポキシアルコールの位置選択的開環反応によって光学活性1,2-ジオールを調製し,α-ヒドロキシカルボン酸への化学選択的酸化反応に付すことで,エピ化やラセミ化を伴うことなく光学活性α-ヒドロキシカルボン酸が合成できることを示した.続いて,α-ヒドロキシカルボン酸からα-ケトカルボン酸への化学選択的酸化反応の開発を目的として検討を行った.α-ケトカルボン酸は,様々な酸化剤によって容易に酸化的開裂反応が進行することが,これまでの研究から明らかになっていたが,有機ニトロキシラジカルを触媒,分子状酸素を共酸化剤とする条件で効率的に反応が進行することを見出した.本研究を通じて,1,2-ジオールからα-ヒドロキシカルボン酸,さらに,もう一段階の酸化によってα-ケトカルボン酸をそれぞれ効率的に合成する手法を確立した.また,低濃度で神経栄養因子様活性を示すセコプレジザン型セスキテルペノイドであるジアジフェノリドの合成研究も昨年度に引き続き行い.鍵反応となる[2 + 2 + 2]環化付加反応の反応基質となる鎖状エンジインの合成法を改良することで,ABC環部に相当する三環性ラクトンの量的供給が可能となった.
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