Boc保護アミナールは酸触媒存在下でt-ブチルカルバメートが脱離して、Boc保護イミンを形成することが知られており、この手法によって高い反応性のために従来法では合成することができなかったBoc保護イミンの系中発生が可能となった。このとき、求核剤としてβ-ジカルボニル化合物やシリルエノールエーテルなどのエノール型の中性の求核剤が存在していると、Mannich型反応が円滑に進行することが知られている。本研究では、求核剤としてアルデヒドを用いてもMannich型反応が進行することを見出した。この反応では、Boc保護アミナールより脱離したt-ブチルカルバメートとアルデヒドの脱水縮合が進行して、エンカルバメートが形成されることが分かった。このエンカルバメートはアルデヒドと比較して求核性が向上していることから、求核剤として活性化された状態となっている。エンカルバメートと同時に系中発生したBoc保護イミンは酸触媒によって求電子剤として活性化されており、エンカルバメートを求核剤としたMannich型反応が進行することが分かった。このとき光学活性なリン酸を触媒として用いると、エナンチオ選択的にMannich型反応が進行した。この方法により、これまで合成の難しかった、プロパルギル位とそれに隣接する炭素の連続する二つの不斉中心を持つ新規のプロパルギルアミンの合成が実現された。また本研究により、酸触媒によって、求核剤と求電子剤の双方が同時に活性化される新しい反応系が確立された。
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