研究領域 | 有機分子触媒による未来型分子変換 |
研究課題/領域番号 |
26105737
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
滝澤 忍 大阪大学, 産業科学研究所, 准教授 (50324851)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 有機分子触媒 / 酸 / 塩基 / ドミノ / エナンチオ選択的 / 位置選択的 / 環化付加 / 複素環 |
研究実績の概要 |
本研究では、高活性な多機能酸塩基有機分子不斉触媒を創製し、森田-バイリス-ヒルマン反応を基盤とする不斉ドミノ反応への応用を行う。医薬品原料や生物活性天然物の母格となる多置換・多官能性キラル有機化合物群の安全で効率的かつアトムエコノミカルな合成法の確立を目指す。今年度はテトラヒドロベンゾフラノン骨格の簡便合成について検討を行った。これまでに当研究室では、入手容易な2,3-ブタジエン酸エステル(アレン酸エステル)を求核種とするケチミンとのエナンチオ選択的な[n+2]型環化反応により、高度に官能基化されたキラル四置換炭素を有する含窒素環状化合物の効率的合成に成功している。今回、アレン酸エステルと環状ジエノンを基質とし、ジエノンの非対称化を伴う形式的[3+2]環化付加反応によるテトラヒドロベンゾフラノンのエナンチオ選択的合成を検討した。その結果、スピロ型ホスフィン系有機分子触媒(R)-SITCPを用いると目的の環化体が良好なエナンチオ選択性でZ選択的に合成できることを見出した。本反応では、まず、触媒のルイス塩基部位がアレン酸エステル7のβ位に求核攻撃することで双性イオン中間体が生成する。α-カルボアニオン中間体がジエノンのヒドロキシ基のプロトンを引き抜くことで、酸素アニオンとカチオン中間体が生成する。カチオン中間体は求電子剤として作用し、酸素アニオンによるγ-付加反応が進行する。生成したβ-カルボアニオンの非対称化をともなう分子内Michael付加反応により形式的[3+2]環化反応が進行し、最終中間体の水素移動、続く中間体からの触媒のβ-脱離により、目的環化体が得られると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ケチミンはアルジミンと比べ、反応性・エナンチオ面選択性が低く、不斉aza-森田-バイリス-ヒルマン(aza-MBH)反応への適用は困難であった。そのような背景下、P-キラルホスフィン触媒がケチミンの不斉aza-MBH反応を促進し、目的付加体を高収率かつ高エナンチオ選択的に与えることを見出した。ベンジルアルコール部位は、反応の律速段階を加速するプロトンシャトルとして働く。本例は、P-キラルホスフィン有機分子触媒による初めての高エナンチオ選択的炭素-炭素結合形成反応である。
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今後の研究の推進方策 |
副反応や選択性の制御が難しく、これまで応用が困難であったMBH反応を有機分子触媒によりコントロールし、キラル四置換炭素の構築を伴うドミノ反応への応用ができつつある。今後は反応の有用性を明らかにするべく、天然物や生物活性物質合成への適用を試みる。
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