公募研究
レドックス(酸化・還元)に応答して機能や物性が変化する有機化合物が材料科学の観点から注目を集めている。最近では、レドックスにより触媒の機能(活性)をコントロールしようとする試みも行われるようになってきた。この方法が実現できれば、化学反応の反応速度を「触媒の量」により制御する新しい反応プロセスの制御法になりうる。一方、我々は、これまでに電気化学的な酸化・還元反応により創製した高活性な化学種を用いた新規有機反応の開発に取り組んできた。たとえば、ある種の化合物を低温で電気化学的に酸化すると炭素-炭素結合が選択的に切断され、対応する有機ジカチオン(カチオンプール)を蓄えることに成功している。このような背景のもと、本年度は昨年度までに引き続いて、有機カチオン前駆体と有機カチオンを電気化学的な酸化・還元により相互変換することにより、レドックスに応答して触媒反応のスイッチ オン・オフが可能な有機分子触媒反応系の実現をめざして研究を推進した。昨年度までに結果、向山アルドール反応において反応のスイッチオン・オフができることが可能となったが、有機カチオン前駆体と有機カチオンのレドックスによる相互変換が必ずしも可逆的ではないこともわかった。本年度は触媒活性があり、かつ、レドックス可逆性をもつ有機カチオン前駆体を新たに設計し、これを用いることにより、ほぼ可逆的に反応のスイッチオン・オフができるようになった。また、多様な有機カチオンの構造と触媒活性の相関についても検討を行い、触媒活性が発現するメカニズムに関して興味深い知見を得た。
2: おおむね順調に進展している
これまでに有機カチオン前駆体と有機カチオンを電気化学的な酸化・還元により相互変換することで、レドックスに応答して触媒反応のスイッチ オン・オフが可能な有機分子触媒反応系の構築に成功しており、この点についてはほぼ目標を達成した。もう一つの研究ターゲットであるアミン系の有機触媒と電気化学を組み合わせた新しい触媒反応系の構築については、有用な知見はあるものの、その具現化には至っておらず、その点が課題である。
レドックス応答性触媒については、適用可能な反応のバラエティーについて探索する。同時に、有機カチオンの構造と活性の相関をさらに精査することにより、より効率的で活性の高いレドックス応答性触媒についても引き続き探索を行う。アミン系の有機触媒と電気化学を組み合わせた新しい触媒反応系の構築については還元系や酸化・還元を組み合わせた反応系についても検討を行い、その可能性を模索する計画である。
すべて 2015 2014
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