光励起ケトンを活性化剤とする分子骨格への直接的官能基導入法の拡張と深化に取り組み、以下に示す2種類の新しい反応を開発し、論文にまとめることで公表した。 (1)C-H結合の直接アジド化反応:これまで開発してきたC-H結合の置換型官能基化反応により導入可能な官能基を拡張することに成功した。これまで導入することが困難であった窒素官能基の導入をはじめて実現した。アルカン、エーテル環、含窒素環、いずれの化合物にも適応可能な一般性の高いアジド化合物合成法である。 (2)2級アルコールの光酸化法:C-H結合の置換型官能基化を脱却し、光励起ケトンを利用するアルコール酸化への展開に成功した。芳香族ケトンを酸化剤とし、光を照射するのみで反応が進行する。様々な極性官能基が共存可能であることが特徴であることに加え、2種類の有機化合物間で選択的な酸化還元反応が進行する興味深い反応系である。 さらに、リン触媒を利用することで、電子不足アルキンの両端を一挙に炭素官能基化する新しい変換法を確立した。 炭素―炭素結合の切断を経た付加反応であることから、原理的には、反応の前後で不要物が全く生じない高環境調和型のアルキンの変換法である。
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