研究領域 | 有機分子触媒による未来型分子変換 |
研究課題/領域番号 |
26105743
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
小槻 日吉三 高知大学, 総合研究センター, 特任教授 (80093954)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 有機不斉触媒反応 / 第四級不斉炭素 / Michael付加反応 / Diels-Alder反応 / 不斉識別反応 / プロキラル化合物 / 生物活性天然物 / アルカロイド |
研究実績の概要 |
第四級不斉炭素中心を有する複雑な構造をした生物活性天然物は数多く知られており、それらを効率的に合成することは、現代有機合成化学上極めてチャレンジングなテーマとなっている。本研究では、有機不斉触媒反応を活用した第四級不斉炭素中心をテーマに以下の内容を検討する。 ① アミン系有機触媒を用いた不斉Michael付加反応による第四級不斉炭素中心の構築:アミン系有機不斉触媒を用いた不斉Michael付加反応の拡張として、2位にアルキル置換基を有するシクロアルカノン類をドナーとするケトンのα位での直接的第四級不斉炭素中心の構築、さらにはβアルキル置換シクロアルケノン類をアクセプターとするケトンのβ位での直接的第四級不斉炭素中心の構築について検討する。 ② チオ尿素系有機触媒を用いた不斉Diels-Alder反応による第四級不斉炭素中心の構築:第四級不斉炭素中心構築法として、オキシインドールから誘導されるジエノフィル成分のチオ尿素系有機触媒活性化による不斉Diels-Alder反応を検討する。具体的には、DanishefskyあるいはRawalタイプのジエンとの反応により、シクロヘキセノン骨格が3位でスピロ置換したオキシインドール類の一般的合成法を開発する。 ③ 複合型機能性有機触媒を用いたメソ及びプロキラル化合物の不斉識別反応による第四級不斉炭素中心の構築:第四級不斉炭素中心を分子内に有するメソ及びプロキラル化合物を出発基質として、不斉識別的Michael付加反応等を検討し、間接的な第四級(不斉)炭素中心構築法に繋げる。 ④ 上記手法を駆使した第四級不斉炭素中心含有生物活性天然物の合成:上記手法の有用性を立証する目的で、第四級不斉炭素中心を有する生物活性天然物(例:(ー)-lycoramine, (ー)- eburnamonine, (ー)-rhazinilam等)の短工程での効率的合成法を検討する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
全体を通してほぼ当初計画通りの成果を得ている。このうち、シクロへキサジエノン類のMichael付加反応を基軸とする不斉識別反応については、高ジアステレオ/エナンチオ選択的なプロセス開拓に成功し、この分野での革新性を確立した。光学活性一級アミンを不斉触媒とする不斉Michael付加反応については、ほぼ当初計画通りの成果を得ており、それをキーステップに用いる(-)-aspidospermidineの形式的全合成も完成した。オキシインドール類の不斉Diels-Alder反応については、一般性の確立を残すのみであり、今後これらの成果を随時論文発表する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
①シンコニジン由来の第四級アンモニウム塩を有機不斉触媒とする不斉Michael付加反応の研究:α―アリール置換ラクタム類の不斉MIchiael付加反応を基軸とする第四級不斉炭素中心構築について一般性を確立し、アルカロイド合成に繋げる。 ②チオ尿素系有機不斉触媒を用いた新規官能基選択的分子変換反応の研究:チオ尿素官能基のすぐれた水素結合形成能に着目し、合理的な分子修飾による新機能性触媒の開発に繋げる。それを利用して新規環形成反応や芳香環官能基化等の開発を行う。 ③上記手法を駆使した第四級不斉炭素含有アルカロイドの合成研究:上記手法を駆使して、本研究の到達目標である第四級不斉炭素含有多環性アルカロイドの合成を検討する。標的化合物として、(+)-mesembrine、(-)-lycoramine等を取り上げる。
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