研究実績の概要 |
ヘリカル2次構造フォールドマーを独自な環状アミノ酸より合成し、その2次構造を精密構造解析するとともに、ヘリックス構造を不斉有機分子触媒として用いる不斉反応を開発するために実験を行った。以下に項目毎に実績をまとめる。 1.環状ジ置換アミノ酸よりなるフォールドマーの合成と2次構造解析:アセタールを持つ4員環、5員環、6員環アミノ酸を合成した。そのホモペプチド、ヘテロペプチドを合成し、溶液状態並びに結晶状態での2次構造解析を行った。キラルなアセタールを持つ6員環アミノ酸からなるホモペプチドでは、ヘリカル2次構造の左右の巻き方の制御は困難であることが判明した。また、架橋部位をもつ5員環状ジ置換アミノ酸を合成してペプチドの中に導入し、架橋によりヘリカル2次構造を安定化したペプチドを新規に設計・合成した。 2.ヘリックス有機分子触媒による不斉エポキシ化反応等:キラルなアセタール部位にのみ不斉中心をもつ6員環状アミノ酸からなるホモペプチドを分子触媒として、カルコンの不斉エポキシ化反応を検討したが、不斉誘起は生起しなかった。架橋により右巻きヘリカル2次構造を安定化したペプチドを用いた場合は、良好な鏡像体のエポキシ化体が得られた。 3.ヘリックス不斉分子触媒による新反応の開発:環状アミノ酸を導入したα-ヘリカル2次構造フォールドマーをニトロメタンのα,β-不飽和ケトン化合物への不斉1,4-付加反応の不斉触媒として用いた。工藤らが報告しているようにN末にトリプトファンを付けると生成物の鏡像体過剰率が高くなることが明らかとなった。特に、3(10)-並びにα-ヘリックス構造と鏡像体過剰率の関係について調べた。
|