本研究では、最近開発したα-イソクプレイン (α-ICPN) を誘導体化し、β-イソクプレイジン (β-ICD) と相補的な触媒能を発揮するent-β-ICD型触媒を新たに創出することを目的としている。また、β-ICDやα-ICPNや関連触媒を活用して、リンパ性フィラリア症の治療薬開発のリードとして期待されるチランダマイシン類天然物とテルモリド類天然物の効率的な合成法の開発を目指している。本年度は、α-ICPNのキノリン部に、Me、n-Bu、およびPh基を導入した誘導体を合成し、ベンズアルデヒドとの森田-Baylis-Hillman反応を指標に触媒活性を調べた。その結果、Me誘導体が良好な収率とエナンチオ選択性を示し (91%、84% ee)、新たなent-β-ICD型触媒を見出すことができた。一方、天然物合成に関しては、β-ICDとα-ICPNを触媒とする不斉森田-Baylis-Hillman反応を活用するポリプロピオナート構造単位の立体制御構築法を確立するとともに、チランダリジジンの初の不斉全合成を達成した。また、テルモリド天然物のC10-C18部の立体制御構築を達成した。
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