研究実績の概要 |
本研究では,ビス(ペルフルオロアルキルスルホニル)メチル基が有機分子触媒を開発する際の新たな酸性官能基となることを提案した。こうした炭素酸では,触媒候補分子の構造的多様性を確保し,触媒作用のファインチューニングすることも期待できるためである。 我々が開発した炭素酸は分子構造中に三つのTf2CH基を有する三価炭素酸であり,DMSO中のpKaは2.0であった。高分子合成の分野では,alpha,beta-不飽和エステルに少量のケテンシリルアセタールを反応させる方法が,不飽和エステルの優れた重合法(グループトランファー重合)として知られている。本年度,我々は炭素酸触媒の特性を考慮し,異なった二種類のMichael受容体を段階的に作用させる逐次的Mukaiyama-Michael反応を開発したした。一連の検討において,グループトランスファー重合などの意図しない副反応による系の複雑化は全くみられなかった点に特長がある。 強酸性炭素酸の共役塩基は,単離できるほどに安定化されたカルボアニオンである。我々は有機溶媒への溶解度が良好な分子内塩の触媒作用を探求した。その結果、1,3-ジケトンのモノケタールに対する双性イオン触媒反応を検討していたところ,溶媒効果に基づく位置選択性の逆転が起こることを見いだした。 最近開発した新たな炭素酸合成試薬であるピリジニウム型双性イオンについても研究を進め,本試薬を用いることでTf2CH型炭素酸のみならず,広く(RfSO2)CH型炭素酸(Rf=ペルフルオロアルキル基)が合成できることを明らかにした。さらに合成した一連の炭素酸の酸性度測定を行い,NfCHR(Nf=n-C4F9SO2)>Tf2CHR~[(CF2)3SO2]CHRの順に酸性度が小さくなることを明らかにした。 また、高度に分極したpush-pullアルケンに関する研究を進め、その触媒作用を検討した。
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