公募研究
転位を導入する母材として、絶縁体の高純度(99.9%)酸化マグネシウム (MgO)単結晶を用いた。高密度な転位配列の導入法として、高温接合技術で形成されるバイクリスタルの粒界を利用した。格子のミスマッチを補償するために周期的に生じる転位や歪んだ構造ユニットを配列させることを試みる。理論計算によって、安定な粒界が形成すると予測されるΣ5(310)[001]対応格子粒界や小傾角粒界を用いることとし、同じ結晶の等価な低指数面を1°~18.4°ほど傾けて切断し、鏡面加工・洗浄後、高温で接合した。またMgOのΣ5(310)[001]対応方位関係から僅かに1.6度ほど傾角させたNear-Σ粒界も用いて比較した。さらに、接合時の熱処理によって、同時に不純物元素を転位に沿ってパイプ拡散させ、不純物元素の量子細線を形成させることも考慮した。界面の断面をTEM/STEM観察するために薄片化を行った。MgOバイクリスタル(小傾角粒界)の接合を行った。ニュートンリングが観察された。これは二つの結晶の隙間を意味するので、見えない領域では、接合がされていることがわかった。この接合面のTEM観察を行った。暗視野像によると、接合面は隙間がなく極めて平坦であり、接合面上に周期的に線状の転位が配列していることがわかった。この周期で転位が導入されることで、二つの結晶のミスマッチを補償していることがわかった。最先端の収差補正透過走査型電子顕微鏡(STEM)の高角環状暗視野像法(HAADF)を用いて、この粒界の局所原子構造を、観察を行った。転位芯近傍で、二つの余分な半平面が存在することがわかり、転位配列の人工的な制御に成功している。
1: 当初の計画以上に進展している
MgOバイクリスタル粒界界面の微細構造解析には、TEMおよびSTEMを用いて行った。汎用TEMを用いて低倍観察、高分解能(HRTEM)観察および制限視野電子回折図形(SAED)解析により界面の微細構造や結晶方位関係について詳細に観察を行った。接合角度について、SAEDパターン解析及びHRTEM像解析により評価した。界面の原子微細構造解析には収差補正装置を搭載し、電子線プローブサイズを0.1nm以下に収束可能な走査透過電子顕微鏡を用いた。この原子分解STEM観察では、高角環状暗視野(HAADF)像法により、構成材料の原子番号に起因したZコントラスト像による優れた組成識別能と、原理的に極めて高い原子直視性が得られる。そのため、界面の識別や組織構造の差異が可能である。また、STEMの収束ビームと電子エネルギー損失分光法(EELS)を組み合わせることによって、原子スケールでの材料組成マッピングを試みた。さらに、転位芯近傍の原子の化学結合状態分析を電子エネルギー損失吸収端微細構造(ELNES)によって解析した。
一方、構造像や組成マッピングから得られた構造モデルを用いて、第一原理による電子状態の理論計算も行う。計算には、密度汎関数理論に基づくVienna ab initioシミュレーションパッケージを用いた。構造緩和計算には共役勾配アルゴリズムを用いて行い、安定構造をシミュレーションします。
すべて 2015 2014 その他
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 4件、 謝辞記載あり 5件) 学会発表 (5件) (うち招待講演 5件) 備考 (1件)
Nature Communications
巻: 6 ページ: 6327-1-6
10.1038/ncomms7327
巻: 6 ページ: 6091-1-6
10.1038/ncomms7091
巻: 5 ページ: 3239-1-6
10.1038/ncomms4239
巻: 5 ページ: 5740-1-8
10.1038/ncomms6740
Nano Letters
巻: 14 ページ: 6584-6589
dx.doi.org/10.1021/nl503212j
http://www.wpi-aimr.tohoku.ac.jp/~xikuhara/index.html