研究領域 | ナノ構造情報のフロンティア開拓-材料科学の新展開 |
研究課題/領域番号 |
26106504
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
永田 賢二 東京大学, 新領域創成科学研究科, 助教 (10556062)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | ナノ構造解明 / 機械学習 / スパース推定 / ベイズ推論 / 交換モンテカルロ法 |
研究実績の概要 |
本研究では,ナノ構造と材料機能の関係を明らかにするデータ駆動型アルゴリズムを開発する. 平成26年度では,電子状態を計算する第一原理の結果から,有効ハミルトニアンをベイズ推論により自動設計する枠組みを構築した.対象として,スピン無秩序状態を示すことで知られるNiGa2S4三角格子系を取り上げた.これは,幾何学的フラストレーションをもつことが知られており,その構造をより詳細に知るために,スピン間の交換相互作用の抽出が重要な課題となる.そこで,本研究では,4*4=16サイト上のスピン配列全てについて,非制限ハートリーフォック(UHF)計算により電子状態のエネルギー準位を計算する.そのエネルギー準位を表現するイジングモデルで表現する.その際に,必要となる交換相互作用の推定が重要であるが,本研究では,ベイズ推定に基づいたモデル選択法を開発した.その結果,これまでの研究で用いられていた第三近接相互作用だけでなく,第一近接や第二近接の相互作用も有意な情報であることを明らかにした. さらにこの枠組みを拡張することで,温度の概念を導入することに成功した.上記の枠組みでは,交換相互作用の抽出の際の誤差計算を全てのスピン配列について同じ重みで計算していた.これは高温状態における有効ハミルトニアン抽出をしたことに相当する.そこで,誤差関数のそれぞれのスピン配列の項にボルツマン因子を重みづけすることにより,温度により,低エネルギーの重みが有意に大きくなるように修正した.その結果,低温領域では,第三近接相互作用のみが有意であるという結果を導出でき,実験での整合性も確認できた.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初予定していたスパース推定のアルゴリズムの不安定性を早くから見出し,それに変わる全状態探索に切り替え,有効ハミルトニアンの抽出につながったことは,当初計画以上に進展していることが伺える.
|
今後の研究の推進方策 |
全状態探索では,スピン配列におけるエネルギー計算に指数オーダーの計算量が必要になる問題があるが,これをマルコフ連鎖モンテカルロ法の一つである交換モンテカルロ法により解決する.
|