研究実績の概要 |
H-ZSM-5は,10員環の直線状細孔とジグザグな細孔が互いに交差した3次元細孔構造を有する.10員環細孔は直径5.5 Å程度であるが,細孔の交差した場所(インターセクション)は広い空間となっている。酸点を細孔内かインターセクション内のどちらかに選択的に発現させることができれば触媒特性の制御が期待できる.これまで,様々な有機構造規定剤(OSDA)を用いてH-ZSM-5を合成し,ヘキサンおよび3-メチルペンタンの接触分解挙動から酸点の位置を推定した。今年度はトルエンおよびm-キシレンの転換反応を行い、骨格内Al分布が触媒活性に与える影響を検討した。
OSDAとしてテトラプロピルアンモニウムカチオン (TPA+)を用い,Na+存在および非存在下でSi/Al=50程度となるようにH-ZSM-5を合成した。トルエンおよびm-キシレンの転換反応は300 - 375 ℃で行った.トルエンの転換反応では微分反応条件となるように,m-キシレンの転換反応では転化率が30%以下となるようにW/Fを調節した.いずれの反応においても,外表面酸点の影響をなくすため2,4-ジメチルキノリン共存下で反応を行った。
酸点位置が異なり,同程度の結晶サイズを持つ[TPA]および[TPA, Na]を用いてトルエン,m-キシレンの転換反応を行った。生成物分布からトルエンの転換反応ではほぼ不均化のみが,m-キシレンの転換反応は異性化および不均化が進行していることが分かった。トルエンの不均化ではいずれの反応温度でも[TPA]が[TPA, Na]の2倍以上の活性を示した。トルエンの不均化は嵩高いジフェニルメタン型の中間体を経由する。したがって,直線状細孔もしくはジグザグ状細孔の狭い部分に面している酸点上よりも,広い空間であるインターセクションに存在する 酸点上では嵩高い遷移状態が形成されやすく,容易に反応が進行したと考えられる。
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