研究実績の概要 |
MFI型ゼオライト、ZSM-5において、有機・無機カチオンのサイズ・種類・電荷がヘテロ原子の位置に影響を及ぼすことを見いだしている。最近では、合成ゲル中にNa+存在下、アルコール共存させてZSM-5の結晶化を行うことで、より精密に骨格内 Al 原子の位置を制御することにも成功した。H27年度において、ZSM-5の酸点、すなわちAl位置が酸触媒性能に及ぼす影響を検討した。 酸点位置の異なるZSM-5はNaカチオン共存下、tetrapropylammonium (TPA)、pentaerythritol (PET), trimethylolethane (TME), 1,4-butanediol (1,4-BDO), 1,6-hexanediol (1,6-HDO)を用いて合成した。また有機分子を用いないでもZSM-5を合成した(Freeと表記)。 合成したサンプルに対し、Hexaneと3-methylpentaneの接触分解を行い、それぞれの分解速度の比に基づく「constraint index (CI)値(= kHX/k3MP)」を算出した。3-MPの二分子反応による分解はかさ高い遷移状態を経由するため、狭いチャネル内では立体的規制を受ける。したがって、広いインターセクションに存在する酸点の割合が高いほど、一分子反応に比べて活性化エネルギーが小さな二分子反応がより進行すると考えられる。つまり、反応場が空間的に狭いときにはCI値は高くなる。CI値の序列は、[TME+Na] > [TBO+Na] > [PET+Na] > [Na] > [PDO+Na] > [TPA+Na]となり、用いるアルコールの種類によりAl位置を制御できることが分かった。 酸触媒反応であるMethanol to Olefins(MTO)を実施し、Al位置がMTO反応活性に及ぼす影響を検討した。触媒寿命とCI値の序列が一致していることが分かり、MTO反応では空間的に狭いところにAlを配置することで長寿命化することができることが分かった。
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